2023.7.04

世界の宝10年、活気戻る 富士山開き、あいにくの荒天でも

金剛づえを手に吉田口登山道を歩く登山者=富士山6合目付近

■5合目「予想以上の人出」

 富士山の山梨県側で1日、山開きを迎え夏山シーズンの幕が開けた。山頂付近はあいにくの悪天候となり、登山道の人はまばら。御来光を期待して歩を進めた人からは、残念がる声が聞かれた。一方、新型コロナウイルス対策の緩和もあり、5合目周辺は登山者や観光客でにぎわいを見せた。富士山が世界遺産に登録されて10年の節目。地元の観光業関係者は「富士山に注目が集まるチャンスだ」として活性化に期待した。

 1日の富士山は不安定な天候となり、8合目から上は強い風雨となった。気象庁の観測データによると、同日午前4時の富士山の気温は5・3度、湿度は100%。山頂は吹き飛ばされそうな強風と激しい雨で、登頂をあきらめて引き返す人も。日の出の時間に合わせて登頂したのは20人程度だった。
 雨風の中、早朝に山頂へ着いたフランス国籍の男性(57)は御来光が見られず、「富士山から日の出を見たいと思っていて、ようやく挑戦できたのに」と悔しそうな表情。「また挑戦したい」と話し、足早に下山した。
 山小屋には多くの登山者が訪れた。富士山吉田口登山道7合目の山小屋「鎌岩館」は、感染対策のため昨年に引き続き定員を半数にするなどの対応を取り、同日は予約がすべて埋まった。岩佐克圭代表はコロナ対策の緩和や開山当日が土曜日となったことが影響したとの見方を示し、「コロナ禍前の状態に戻った」と話した。
 一方、5合目にも活気が戻った。同日は大型バスが次々と訪れ、外国人観光客の姿も多かった。ロータリー周辺では登山前の説明を受ける団体客や、思い思いに写真を撮影する人の姿が見られた。岐阜県から訪れた大野幸治さん(49)は「山小屋が混雑していたので、予約が取れるこの時期に登ることにした。人出が予想以上に多くてびっくり」と驚いた表情を見せた。石川県から訪れた閨谷彰さん(49)は「昨年に続き開山に合わせて登山したかった。日本一の山というだけで魅力がある」と話した。

(2023年7月2日付 山梨日日新聞掲載)

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