2023.4.07
明見湖の絵図「役立てて」
勝俣さん 企画展に収集資料寄贈
ふじさんミュージアムで開催中の企画展で展示されている富士山の登山案内図を収集したのは、富士吉田市小明見の織物業勝俣源一さん(73)。約30年前から、ハスが自生し「ハス池」とも呼ばれる地元の「明見湖」の保全活動に取り組んできた。
明見湖は江戸時代、四尾連湖(市川三郷町)などと合わせて「富士八海」と呼ばれ、富士講の巡礼地となっていた。江戸時代から昭和初期の富士山の案内図で描かれていて、葛飾北斎が湖を描いた絵も残っている。
2000年代にかけて富士山の世界文化遺産登録に向けた機運が高まると、勝俣さんは構成資産に明見湖が名を連ねると考え、湖に関する資料を古本屋やオークションなどで収集するようになった。「小さくとも明見湖を見れば、値段が気にならないくらい夢中で買い集めた」と語るほどで、現存品が数点しかない貴重なものなど収集資料は約450点にも上った。
2013年、富士山が世界文化遺産登録されたが、明見湖は構成資産にはならなかった。「歴史を見ても、確かに明見湖は信仰と芸術の源泉だ」との思いが揺らぐことはない。70歳を過ぎ「役立ててもらいたい」と、収集した資料のほぼすべてをミュージアムに寄贈することを決めた。
企画展に訪れた勝俣さんは「ありがたいこと。多くの人に見てもらいたい」と話した後、「願わくば絵図に描かれた明見湖を見つけ出してほしい」と笑いながら語った。
(2023年4月5日付 山梨日日新聞掲載)
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