富士山吉田口「信仰の道」継承へ
神社や山小屋修復 富士吉田 麓から登山を再興
富士吉田市は富士山の麓から5合目までの登山道利用者増加策として、吉田口登山道沿いの廃業した山小屋や茶屋などの建物を修復、跡地に解説板を設置する。来年度から整備へ向けた調査を進め、計画を策定。歴史ある富士山信仰と登山道の継承を図る。
市によると、登山道の保存と活用に向けた調査を2023年度から2カ年で実施し、計画を策定する。麓から5合目に残る荒廃した神社や小屋を修復し、廃業した茶屋や山小屋の跡地には、信仰登山の歴史を紹介する解説板を設置することを検討している。環境に配慮したトイレの設置も計画する。
富士山は古来から神仏がすむ霊山とされ、修行者による信仰登山が行われ、江戸時代になると富士山を信仰する「富士講」の最盛期となり、麓から山頂を目指した。しかし1964年の富士スバルラインの開通で5合目からの登山が一般的となり、麓から5合目までの山小屋や茶屋の多くが廃業。麓から5合目は衰退の一途をたどった。市によると、2022年夏の開山期間中、5合目を通過した登山者が11万5千人だったのに対し、麓からの登山者は7028人にとどまる。
市は、富士山の文化的な価値を後世に伝え、登山道の保存と活用することが重要と捉え、事業を進める。登山道は県道で、国の史跡、特別名勝でもあるため、国や県などの関係機関とも連携していく。樹木の伐採が可能かどうかも検討する。
財源は、寄付金5千万円とふるさと納税のクラウドファンディングで資金を募る考え。麓からの登山の再興については一般社団法人「カノエサル」も計画しており、市は、意見を聞きながら進めていくという。
市担当者は「信仰の対象としての富士山の普遍的な価値を残し、伝えていかなければならない。地元としてできることをしていく」と話している。堀内茂市長は「麓から登るのが富士山信仰の原点。魅力を伝えていきたい」としている。
(2023年2月9日付 山梨日日新聞掲載)