訪日客に魅力伝える
観光協会に中国人職員
山中湖観光協会に昨年11月、中国出身の呉世凡さん(27)が就職し、日々協会の業務にいそしんでいる。呉さんは5年前に来日して東京都内の大学院で観光を学び、協会側の誘いで1年間の契約職員になった。観光案内所で中国人観光客の応対などに当たり、「観光についてより深く学んでいきたい」と意気込む。
呉さんは協会事務所に併設する観光案内所で、中国からの観光客に中国語で観光地を紹介したり、協会員の観光業者らとの電話対応をしたりしている。仕事に役立てようと村の観光パンフレットを読み込み、地理もマスター。「職員の皆さんにサポートしてもらいながら業務をしている」と笑顔を見せる。
中国広東省広州市出身で、大学の日本語学科を卒業して2018年に来日。城西国際大大学院の国際アドミニストレーション研究科に通い、DMO(観光地域づくり法人)や観光を通じた地域づくりなどを学んだ。都内のホテルから就職内定が出ていたが、21年に新型コロナウイルスの感染拡大で取り消しに。「これからどうすればいいのか悩んだ」と振り返る。
大学院で所属していたゼミナールには当時、社会人枠で大学院に入った協会の横山知己事務局長もいた。ゼミの教授から呉さんを紹介された横山事務局長は22年、「協会で観光について学んでみては」とオファー。大学院生時代に村を2回訪れた経験があった呉さんは、誘いを快諾した。
村内に移住して毎日自転車で通勤する生活を送る呉さんは「山中湖を一周するとさまざまな表情の富士山を見ることができる。まさに『神様の恵みの場所』だ」と感じている。故郷の広州市は気温が0度を下回ることはなく、「氷点下なのに雪があまり降らないところも驚いた」と新鮮に感じる日々を過ごす。
日本政府の入国制限の緩和で訪日客が戻る中、「外国人の感覚からすると山中湖は富士山の周りにある湖の一つというイメージ。ターゲットとなる観光客の国民性を考えた情報発信が必要なのではないか」と考えている。
協会で外国人職員を採用するのは初めて。横山事務局長は「いずれはインバウンド需要が戻る。外国人の職員と一緒に働くことで対応の質が向上し、職員も刺激を受けるのではないか」と、期待をかけている。
(2023年2月2日付 山梨日日新聞掲載)