富士山鉄道 イコモス評価
合意形成の必要性指摘
長崎幸太郎知事は25日、県が検討している富士山麓と5合目を結ぶ「富士山登山鉄道構想」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)が「構想は評価できる」との見解を示していることを明らかにした。イコモスは昨年秋に文化庁に送付した文書で、構想が来訪者管理や環境悪化などの課題を解決する手法になり得るとの考えを示した。ただ地元では反対の意見も強く、イコモスは関係者との合意形成に向けた取り組みを課題として指摘した。
イコモスの見解は長崎知事が同日の会見で明らかにした。知事によると、文書では「登山鉄道構想は富士山が直面する来訪者管理、環境悪化に関する多くの課題を解決する統合的なアプローチとなり得るため、評価できる」とした。一方、「実現可能性を探り、多くの利害関係者の支持をもらうために多くの作業が必要」との指摘もあった。
長崎知事は会見で「積極的かつ高い評価をいただいた。心強い」と述べた。
県によると、文書は昨年秋、イコモスが文化庁に送り、県に情報として提供があった。県は昨年2月に登山鉄道の構想案を公表した後、富士山世界文化遺産学術委員会の指示で、同年夏に構想案の英訳版をイコモスに送っていた。
構想案には、富士北麓地域の首長や一部の観光団体から環境保全などの面から反対意見がある。長崎知事は会見で「ポストコロナの観光のあり方を地元と意見交換して認識を共有したい」と述べた。
一方、イコモスの文書について、富士吉田市の堀内茂市長は取材に「構想案は地元抜きで作られ、イコモスに送られていたことも知らされず、強い不信感を覚える」と指摘。「鉄道には巨額の資金がかかり、大規模な工事で自然破壊も起きる。必要性は感じない」と語った。
構想案では富士山有料道路(富士スバルライン)上に架線を用いない次世代型路面電車(LRT)を敷設し、緊急車両など以外の通行を規制。整備費は約1400億円としたが、往復料金を1万円と設定した場合は年間約300万人の利用があると試算し「開業早期から黒字化が見込める」とした。民間主体の運営を想定している。
(2022年10月26日付 山梨日日新聞掲載)