2022.7.22

富士山写真家の喫茶閉店

富士吉田 飯島さん妻「思い出に感謝」

 富士吉田市下吉田の「喫茶 富士」が今年5月、ひっそりと店を閉じた。四季折々の富士山を撮り続けた富士吉田市の写真家・飯島志津夫さん=享年(73)=が1965年にオープン。2007年に病で亡くなった後は妻の栄子さん(80)が店を切り盛りしてきたが、背中の痛みもあり、区切りを付けた。栄子さんは「主人と仲間との思い出がいっぱい。感謝しています」と話している。

 富士山に魅せられ、東京都から富士吉田市に移り住んだ志津夫さんは、大のコーヒー好きだった。

 好きが高じて始めたのが喫茶店「富士」だった。当時、コーヒー豆は貨物列車で届けてもらい、都内まで仕入れに行くことも。志津夫さんが富士山の撮影に出掛けると、栄子さんが店を預かった。「『私はやらないわよ』と言ってたのに、忙しくなってしまった」と笑いながら振り返る。

 「富士」には、多くの人が訪れた。志津夫さんの写真仲間や常連客、栄子さんが悩みを抱える若者の相談相手になることもあった。「『マスター(志津夫さん)が入れるコーヒーの方がおいしい』なんてことを言われながら、お客さんとの会話は本当に楽しかった」と話し、志津夫さん亡き後も店を守ってきた。店内は志津夫さんが撮影した富士山の写真が飾られた。

 ここ数年、背中の痛みがあり、悩んだ末に今年5月に閉店。閉店してしばらくは店を畳んださみしさと、区切りを付けた「さっぱりとした」気持ちが入り交じった日々を過ごしたという。

 閉店から約2カ月がたち、栄子さんは晴れやかな表情で語った。「来てくれた人との思い出と支えてくれた人への感謝の気持ちでいっぱい。すべての人に『ありがとう』と伝えたい」

(2022年7月20日付 山梨日日新聞掲載)

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