富士山展望 笛吹・新道峠デッキ1年
芦川観光にぎわい バス増便、新たなツアーも
笛吹市芦川町の展望デッキ「新道峠からの富士山眺望スポット FUJIYAMA ツインテラス」がオープンして約1年が経過した。市が観光客の誘致と芦川地域の活性化につなげるために整備。新たな観光ツアーが組まれ、多くの来場者でにぎわっている。芦川地域に観光客が足を運ぶきっかけ作りにはなったものの、宿泊などを伴う滞在型観光には結び付いていないといい、さらなる観光資源の発掘の必要性を訴える声も上がる。
「富士山と河口湖がよく見える。景色が素晴らしい」。1日午前、横浜市から展望デッキを訪れた夫婦は、富士山と河口湖を一望できる景色を眺めてしきりにカメラのシャッターを切った。
展望デッキは、新たな観光スポットにしようと、市が昨年7月に「過疎債」を約9割活用して約1億7800万円で整備。同市芦川町と富士河口湖町の間の尾根沿いにあり、富士山と青木ケ原樹海、河口湖などを展望できる。富士山を背景に撮影できるベンチやテーブルなどを設け、同年7月31日にオープンした。
市観光商工課によると、昨年はコロナの影響で運休する時期もあったが、1万3367人が直通バスを利用。想定以上の利用でバスが満席となり、臨時便を出すケースもあった。今年は全ての観光客が乗車できるよう増便体制でバスを運行し、大型連休をはさむ今年4月25日~6月27日は6559人が利用した。
魅力発信
展望デッキのオープンで、芦川地域を訪れる観光客は急増。農産物直売所「おごっそう家」では、オープン期間中の来店者が新型コロナウイルス感染拡大前より最大で約7割増加した。名物の太巻きすしを増産して対応したが、午後1時には完売した。野沢今朝幸店長は「オープン期間中には来店者が増え、とてもありがたい」と話す。
市芦川町観光協会は観光客が増えていることを踏まえて新たなツアーを組んでいる。電動アシスト自転車を使って展望デッキなどを周遊するもので、昨年9~11月に計8回開催。定員を超える問い合わせがあった日もあり、今夏も開催を予定している。キャンプ場での屋外サウナ体験などを用意していて、協会の担当者は「今年も複数のツアーを企画し、芦川地域の魅力を発信する機会にしたい」と話す。
資源発掘
芦川地域を訪れる観光客が増加する一方、宿泊者の増加につながっていないことが課題になっている。同市芦川町鶯宿の農家体験民宿アシガワ・デ・クラッソでは、展望デッキオープン以降も宿泊者の増減に変化がないといい、担当者は「展望デッキは富士山が見える晴れの日に人気を集めている。宿泊しても曇天だった場合のリスクを避けるため、日帰りでの観光地として定着している」と話す。
展望デッキ以外にも観光客が楽しめる観光拠点や観光事業が必要だとし、担当者は「観光客の滞在時間を増やせるような工夫をしないと、今後も宿泊者の増加は見込めない」と続けた。
(2022年7月9日付 山梨日日新聞掲載)