富士山登山 再び活況を
■行動制限ない夏 1合目茶屋店主、期待
富士山1合目馬返しにある茶屋「大文司屋」が7月の山開きに向けて、準備を進めている。大文司屋は昨年、約半世紀ぶりに復活したが、新型コロナウイルス禍で登山者の少ない夏に。今夏は落ち着いた感染状況や入国制限の緩和で、登山者と外国人観光客は増加が見込まれる。店主の羽田徳永さん(58)は「麓から登る富士山の魅力を発信していきたい」と話し、復活後初めて迎える“本格営業”の夏に期待をかける。
6日昼過ぎ、大文司屋の建物内で、金剛杖に焼き印を丁寧に押しつける羽田さんの姿があった。20秒ほどして焼き印を杖から離すと、「吉田口馬返し 大文司屋」の文字。既に約30本を用意し、7月の山開きに向けて順次増やすなど、登山客の受け入れ準備を進めている。
大文司屋は江戸時代から富士講信者らを中心に親しまれたが、1964年の富士山有料道路(富士スバルライン)開通で麓から5合目までの利便性が向上し、同年に廃業。昨年4月、廃業時の経営者の息子の羽田さんが約50年ぶりに復活させた。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で、昨夏の吉田口登山道の登山者数は6万5519人にとどまり、富士吉田市が統計を始めた1981年以降最少。麓から登る人も少なかった。
今年、大文司屋は4月20日にオープンし、1カ月半が経過したが、来訪者は昨年よりも増加。羽田さんは「なじみの客が増えたこともあるが、昨年よりもはるかに多い」と手応えを口にする。登山シーズンを迎える7月以降は、さらに期待できるという。
さらに、政府は6月10日から、訪日外国人観光客の受け入れを再開。羽田さんは「日本人よりも麓から登ることを好む傾向にある。しっかりと迎え入れたい」と話す。
7月1日の山開きまで3週間。「コロナ禍で富士登山の選択肢も増えてくると思う。麓ならではの豊かな自然がある。楽しみ方をしっかりと発信していきたい」と話し、開山の日を心待ちにしていた。
(2022年6月10日付 山梨日日新聞掲載)