富士登山者の不調 自動検知
富士山 5G、AI活用実験スタート
噴火時 麓と映像共有も
山梨県や東大、民間企業などでつくる共同事業体「フジサンDX」は富士山で、第5世代(5G)移動通信システムに人工知能(AI)といった最新技術を組み合わせ、火山防災対策や登山者の安全確保などを図る実証実験をスタートさせた。23日は研究内容を公開し、登山中に具合が悪くなった要救助者の自動検知システムを紹介。噴火時にドローンを飛ばして映像をリアルタイムに麓に送り、噴火の状況などを確認する構想などを説明した。
フジサンDXは県や東大、県富士山科学研究所、NECネッツエスアイなど7者で構成。実証研究では富士山5~7合目に東大が開発した小型のローカル5G基地局を設置して、低温や強風など過酷な富士山の環境でも高速通信が可能かなどを検証している。
この日は富士山5合目総合管理センターで、外に設置したカメラの映像を5Gで共有してAIが分析し、登山中にうずくまった人や立ち止まった人がいた場合に、知らせるシステムを披露。山小屋や救護所に受信端末を設置することで、要救助者の早期発見などにつなげるという。
将来的には噴火時に飛ばしたドローン映像を麓と共有し迅速な被害状況の確認につなげたり、富士山ハザードマップの噴石や火砕流に関する情報を登山者のスマートフォンに即座に共有して安全な避難につなげたりすることを目指している。
年内に6合目にローカル5Gの基地局を設置するなどして、5合目との映像共有などのテストをする。総務省から約1億5千万円の研究事業費の補助金を受けている。
県富士山科学研究所の吉本充宏主幹研究員は「実用化にはまださまざまな課題があるが、一つずつクリアし、この富士山という過酷な環境で安全を実現していきたい」と話している。
(2021年10月24日付 山梨日日新聞掲載)