選手 ネットで富士山“周遊”
五輪・パラ県内滞在中にもてなし 協議会「観光活用に手応え」
新型コロナウイルスの影響で自由に外出できない東京五輪・パラリンピック出場選手に、富士山の風景を楽しんでもらいたい-。富士北麓地域の異業種でつくる協議会が富士河口湖町のホテルに滞在した延べ約50カ国の選手向けに、5合目や風穴などを巡るツアーをインターネットで配信する試みをした。選手たちからは好評で、大舞台を前に緊張がほぐれた様子だったという。コロナ禍で外出自粛などの制限が続く中、協議会は「ネットを活用した観光を新たなツーリズムとして提供したい」と今後の展開に意欲を示す。
企画したのは富士北麓ユニバーサルアドベンチャーツーリズム協議会(FUAT、井出泰済会長)。富士河口湖町の富士レークホテルや富士の国やまなし通訳案内士会、富士山アウトドアミュージアム、ドローン事業者のArakura Droneの4団体で構成。富士北麓地域を観光客により深く楽しんでもらおうと今年4月に設立し、異業種連携でアクティビティーを開発している。
大会組織委の要請で東京五輪・パラリンピックの選手を富士レークホテルで受け入れることが決まり、オンラインツアーを企画。感染防止策として選手の観光目的の外出が禁止されたため、「富士山の魅力を少しでも感じてほしい」と内容を検討した。
東京五輪の32カ国80人の選手には7月18~22日、パラリンピックの20カ国200人の選手向けには8月25~29日に行った。富士山5合目や青木ケ原樹海に協議会メンバーが出向き、小型無人機「ドローン」で上空から撮影した映像も使いながら富士山の歴史や文化、見どころなどをライブ配信した。
五輪選手には自身のスマートフォンでQRコードを読み込んでもらい、ツアーを見てもらった。パラ選手にはスマホへの配信に加え、食事会場にモニターを設置して配信した。ツアーのほかにも日本の伝統文化を紹介する映像も流していたといい、「選手はリラックスして映像を楽しんでくれていた」(ホテル担当者)という。
感染拡大で富士北麓地域を訪れる観光客が例年を下回る状況が続く中、協議会は青木ケ原樹海のトレッキングやカヌー体験のほか、ホテル内にいても楽しめる「新たなツーリズム」としてオンラインツアーなどを今後提供していく方針で、コロナ禍での観光客誘致につなげる考えだ。
井出会長は「東京五輪・パラリンピック選手にオンラインツアーを実施した経験を生かして新たなツーリズムを企画立案し、コロナ禍を乗り切っていきたい」と話した。
(2021年9月6日付 山梨日日新聞掲載)