2021.9.08

下吉田から富士活写

2地域居住男性「写画」幻想的に

 富士吉田市新町2丁目の写真家佐野康男さん(73)は、同市の下吉田地区から見える富士山の撮影を続けている。合成や加工で幻想的な作品を生み出す独自の技法を採用。2年前からは都内との2地域居住の生活をしながら、富士山と向き合っている。

 佐野さんは身延町出身。日大芸術学部入学を機に、写真撮影を本格的に学び始めた。卒業後は主に東京のCM制作会社で勤務。1988年に海外の撮影スタイルも学ぼうと米国で1年間生活。ニューヨークの街並みなどを撮影し、現地のカメラマンの作品にも触れたが、「大きく得るものはなかった」と落胆が入り交じる中で帰国した。空港から自宅へ向かう途中、高速道路から見えた富士山の夕景に感銘を受けた。以来、富士山の撮影にのめり込んだ。

 富士山が見える都内のマンションを契約。山梨県に通いながら撮影を続ける中、富士急行線下吉田駅に降り立った際、静かな街並みや新倉山浅間公園など周辺の雰囲気を気に入り、下吉田地区で暮らすことを決意した。2019年から、東京でタクシー運転手をしながら、毎月、同市の自宅に1週間ほど滞在している。

 富士山は被写体として多くの人が撮影しているため、06年から、周辺の雲や木々などを合成したり、作風を油絵調などに加工したりして幻想的な作品を作る「写画」と呼ぶ独自の技法で取り組んでいる。これまでに約100作品を手掛けてきた。

 現在は上空の雲の変化や星空、立ち込める霧、朝焼けと夕焼けのほか、下吉田の街並みを切り取った写真を中心に撮影。作品は同市新町2丁目のゲストハウス「Arakura(あらくら)」で展示している。

 「富士山をきっかけに下吉田の地域の美しさも発信したい」と佐野さん。富士山を背景にした下吉田の街並みを取り入れた写真も発表していくつもりだ。

(2021年9月6日付 山梨日日新聞掲載)

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