霊峰富士 静かな夏
富士山の夏山シーズンは最終盤に入った。登山道は2年ぶりに開通されたが、新型コロナウイルス感染拡大が続く中で、登山者の姿は例年に比べて大幅に減少。7月1日から今月25日までの登山者数は感染拡大前の2019年同期と比べ7割近く少なくなっている。
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山梨県側の吉田口登山道は今年も例年通り7月1日に開山。登山者が登山道で密集する場面は例年に比べて少なく、マスクを着けて登る人の姿も見られた。山小屋も原則予約制にし、就寝スペースを個室化するなど独自のマニュアルで感染対策に努めていた。
山梨県は富士山有料道路(富士スバルライン)の1合目下駐車場や5合目総合管理センター、6合目保全協力金徴収所で検温を実施。マイカー規制中はシャトルバスに乗り換える富士吉田市上吉田の富士山パーキング(県立富士北麓駐車場)でも実施した。
夜間に麓から富士山の山小屋などの明かりが見える恒例の光景も復活したが、登山者の減少は顕著だった。県や富士山の地元市町村などでつくる富士山安全指導センター運営協議会の統計によると、7月1日から8月25日までの登山者数は4万6761人で19年同期の32%、18年同期の29.2%にまで減少。最も多く訪れた日は梅雨明け最初の週末、7月17日の2731人だったが、19年同期で最多だった6420人の半分に届かなかった。
センターの事務局を務める富士吉田市によると、登山者数の減少は東京圏への緊急事態宣言の発令や、本来はハイシーズンとなる8月中も週末を中心に悪天候の日が多かったことが原因とみられる。開山期間は9月10日まで続くが、市担当者は「夏休みシーズンも終わり、今後、多い日でも登山客が2千人に達する日はないのではないか」と話している。
(2021年8月31日付 山梨日日新聞掲載)