富士登山 接触回避に腐心
本紙記者ルポ 検温3ヵ所、人影まばら
2年ぶりの山開きとなった富士山は1日、悪天候に新型コロナウイルス禍も重なり、登山者の姿はまばらだったが、一人一人がゆったりと登山を楽しむ姿があった。県が1合目と5、6合目で検温するなど、関係者は「富士山でコロナ感染者を出さない」と厳戒態勢。マスク着用の登山は息苦しく、マスクを外して他の登山者と距離を取って登った。開山初日の吉田口登山道を記者が歩いた。
6月30日午前8時半ごろ、5合目を出発。普段の癖で着けたままのマスクはすぐに息苦しさを増した。マスクを早々に外し、他の登山者と近づかないように気にしながら登った。7~8合目は岩場。両脇に設けられた鎖をつかみそうになるが、県などがまとめた登山マナーで「登山道のロープなどの接触を避ける」の記述があるのを思い出し、さっと手を引いた。
約4時間で標高3400メートル地点の「本八合目」の山小屋に到着。食事は麓の飲食店と同様に机に仕切りが設けられていた。就寝スペースも通常は枕が触れ合うほど混雑するが、今年は収容人数を減らして個室にしているため、快適な空間だった。
1日は未明から大雨で、御来光は見られなかった。前泊した登山者の大半が午前中に下山。富士山安全指導センターによると、午後7時までの登山者数は61人だった。2年前は雨天でも900人が登り、担当者は「コロナ禍での外出自粛が影響した可能性が高い」と言った。
富士山有料道路(富士スバルライン)の1合目では、1日から検温所が設営された。係員は車両を誘導し、窓から検温を実施。体調不良や濃厚接触者との接触などがないかを確認すると「いってらっしゃい」と送り出した。検温は5、6合目でも実施した。
例年と様変わりした富士山。大雨で御来光や山頂が“お預け”となっても「山は逃げない。また来よう」と、満足げに下山する登山者の表情が、2年ぶりに開山した意味を物語っていた。
(2021年7月2日付 山梨日日新聞掲載)