吉田口の山小屋 予約低調
富士開山 感染対策徹底でも…
7月1日に2年ぶりの開山を控えた富士山の吉田口登山道沿いにある山小屋が、営業開始に向けて準備を進めている。今季は新型コロナウイルス感染対策のため、完全予約制で宿泊客を受け入れ、収容人数も制限。パーティションを設置するなど感染対策を徹底する。ただ、予約はコロナ前の2、3割にとどまっており、山小屋経営者らは「外出自粛ムードが漂っているので、集客は望めない可能性が高い」と語る。
7合目の東洋館は、9日から開山に向けて寝室にパーティションを設置するなど改修作業を始めた。今夏の収容人数はコロナ前の半分に当たる150人程度に制限する予定。ただ、現時点で繁忙期の8月はまだ予約が少なく、堀内康司代表は「コロナ禍で収容人数に達することはないだろう」とこぼす。
7合目の七合目トモエ館では今季、館内の宿泊スペースを全て個室に改修。感染予防の目的に加え、宿泊客のプライバシーにも配慮。コロナ禍での「新様式の山小屋」とするため、設備投資した。だが、予約状況はコロナ前の2割。同じく個室を新たに設けた8合目の太子館も予約は2割にとどまっている。
8合目の白雲荘は新たに自動体温測定器を導入。コロナ前、8月を中心に週末は満室だったというが、現在の予約状況は3割ほど。担当者は「個人だけでなく団体予約もない。感染対策は万全にしているのに…」と話した。
登山道沿い山小屋16軒などでつくる富士山吉田口旅館組合によると、今季は多くの山小屋が5月上旬ごろからホームページなどで予約受け付けを開始。例年は5月時点で満室になる山小屋が多いが、今年は東京圏や関西地方の客足が鈍く、通常は団体客が見込めるツアー会社の予約も入らないという。
組合は今季、宿泊客の収容人数を減らし、原則予約制にして感染対策を実施することを決めたほか、客室は1人当たり2畳か90センチ以上の間隔を確保し、パーティションを設けるなどの基準を県や富士吉田市と策定した。
中村修組合長は「山小屋は昨年営業できず、今季は一丸となって感染対策の徹底を決めた。安全な環境を整備していることを多くの人に理解してほしい」と話している。
(2021年6月24日付 山梨日日新聞掲載)