2021.4.04

〈ハザードマップ改定〉富士山噴火到達エリア拡大

広域避難見直し必至

記者会見する富士山科学研究所の藤井敏嗣所長=甲府・県防災新館

記者会見する富士山科学研究所の藤井敏嗣所長=甲府・県防災新館

 3月26日に公表された富士山噴火時の改定版ハザードマップで、中大規模の噴火による溶岩流の被害想定が初めて示された。到達範囲は旧マップから大幅に拡大。山梨県内は新たに上野原市と大月市が含まれるなど、避難が必要となる住民が増えるのは確実だ。溶岩流が到達する時間も早まり、早期避難に向けた対応も求められている。山梨、神奈川、静岡の3県などによる協議会は広域避難計画を見直すが、円滑な避難につなげられるか問われている。

 「新たなスタートラインに立った。新しいリスクに対応するため、自治体間で連携を取り、来年度、広域避難計画の改定に取り組みたい」。長崎幸太郎知事は3月26日の富士山火山防災対策協議会で、早期の計画策定に意欲を見せた。

風水害を想定
 山梨、静岡、神奈川3県などでつくる「富士山火山防災対策協議会」が2015年に策定した広域避難計画では、富士北麓6市町村の住民約9万2600人が国中など17市町村へ避難すると明記。今回の改定で大月市と上野原市が新たに溶岩流の到達範囲に含まれ、計10市町村が国が指定する「火山災害警戒地域」となる。避難が必要となる避難者が増え、円滑な避難が一層課題になるとみられる。

 上野原市は各種防災計画で地震や風水害のみを想定しており、噴火災害を想定した計画を策定したことはなかった。担当者は「火山灰は警戒していたが、溶岩流が市に到達するとは思わなかった。噴火災害を想定した計画を早急に検討したい」と強調する。

具体的方法を
 協議会が04年に策定した旧ハザードマップで、8日から約40日間で溶岩流が到達するとされた都留市。今回の改定で桂川を沿って7時間半で市境に押し寄せることが判明した。早期避難に向けた対応が迫られており、堀内富久市長は「これほど速いスピードで溶岩流が到達することに衝撃を受けている。県と郡内地域が一体となり、避難計画の策定を急がなくてはいけない」と語った。

 協議会は改定版のハザードマップを基に、来年3月にも広域避難計画を見直す方針。現行の計画に基づいた広域避難訓練では避難時の車の渋滞や、高齢者や障害者の移動手段の確保などの課題が指摘されている。

 改定版ハザードマップの検討委員長を務めた富士山科学研究所の藤井敏嗣所長は3月26日の会見で、こう強調した。「現在の広域避難計画が本当に良いものなのか、検討していく必要がある。あらゆる状況を想定し、具体的な避難方法を考えていかなければいけない」

(2021年3月27日付 山梨日日新聞掲載)

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