富士山がもたらした天然の冷蔵庫

　富岳風穴は山梨県富士河口湖町精進字青木ケ原にあり、全長約２００メートル、天井の高さ５メートルほどの溶岩隧道で、入洞２０メートル付近に東方に延びる長さ８０メートル以上の大支洞をもつ。

　洞窟が溶岩によって形成されたことを示す「縄状溶岩」や「溶岩棚」、地面から生えるように凍った逆向きのつらら「氷筍」や鍾乳石など、自然が作り出した多様な美を観察できる。

　洞穴内の平均気温は３度に保たれ、地中深くへと通じる穴からは、夏でも冷気が立ち上がってくる。かつては大量の蚕種や穀物の貯蔵庫として使われ、とりわけ養蚕業の発展を支えた。最深部には、往時をしのばせる貯蔵棚などが置かれ、富士山がもたらした天然の冷蔵庫の恩恵を今に伝えている。

　現在は、交通の便がよく、入洞の容易なことで、観光スポットとして整備され、多くの観光客が訪れる。２０１６年には、洞窟内の照明施設のＬＥＤ化、外国語表記の案内看板の整備など、施設をリニューアル。

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　国天然記念物。１９２９年１２月１７日指定。