砂走り下山道復活なるか 富士山落石事故現場の調査開始
国、県で構成する富士山落石災害対策技術検討委員会(委員長・浜野一彦山梨大学教授)は4日、富士山6合目で第1回調査を開始した。同委員会は、昨年8月に大落石事故のあった吉田大沢に再び下山道が設置できるかどうか、防災対策も含めて総合的に研究、調査するのが目的。結果は57年度末までにまとめるが、ことしの富士山は昨年の惨事の影響などで登山者が激減している。閑散とした状態が続く山小屋の人たちは「砂走りルートが復活すれば…」と調査隊に熱い視線を送っていた。
同日は委員会の構成メンバー15人が参加。
一行は午前11時半に6合目に到着し、浜野委員長から岩が崩落した久須志岳、落石ルート、現在の状況などの説明を受けた。今回の調査は各省庁、県の受け持ち分担に基づき、調査方法を決めるための下調べで、5日も6合目付近で継続して行う。
同委員会は今後、国土庁が災害発生時の避難誘導方法と広報の在り方、建設省が崩落を続ける久須志岳の割れ目の進行状況と落石の実態調査、林野庁が落石(浮き石)の可能性と影響調査を分担。県の森林土木課が新旧航空写真を比較しての土石の動き調査、土地水対策課が落石の事前広報システムの開発に取り組む。
同委員会はこれらの結果を57年度末までにまとめ、吉田大沢への下山道再設置が可能かどうか、また可能な場合どのような対策が必要かなどを報告する。予算は国、県合わせて1800万円。浜野委員長は「吉田大沢をあらゆる角度から研究、調査する。砂走りがいいか別ルートか、あくまで白紙の状態で臨む。
富士山はことし、昨年の大落石事故の余波、新下山道の安全性への疑問、不況、ポートピアの影響などで、登山者が激減している。富士吉田署のまとめによると、7月の登山者(8合目)は7628人で、昨年の3万1501人の4分の1以下。8月も1日が8千人、2日が4千人で、伸び悩んでいる。このため各山小屋は一度も満員にならず、深刻な影響を受けている。既に一部の山小屋関係者からは、砂走り下山道の復活を望む声が出始めている。 【当時の紙面から】
(1981年8月5日付 山梨日日新聞掲載)