富士山グラリ 震度3 5日間で有感3回、震源は直下
富士山(3、776メートル)の山頂にある気象庁富士山測候所で20日から24日の間に3回の有感地震があった。いずれも微小なもので、震源は富士山の直下と推定される。気象庁は「噴火に向かう兆候はない」としているが、珍しい地震のため、富士山頂なとに25日地震計を設置、調査を始めた。富士山測候所の観測によると、3回の地震は20日午前5時56分ごろに震度3(弱震)、23日午前1時ごろ震度1(微震)、24日午前6時ごろ震度2(軽震)の揺れを感じた。他の気象観測所では無感だった。震源地は富士山の下の浅い所で、マグニチュード(M)は1回目が1.8、2回目は1以下、3回目は1.4といずれも微小だった。
富士山は、いわゆる休火山のため常時観測体制は取られていないが、東大地震研究所が昭和54年から約4年間行った集中観測ではM3.0未満の微小地震を28回観測した。同研究所の井田喜明教授は富士山の山体で地震が起きることは珍しくないと述べている。
しかし富士山頂だけで有感地震があったのは珍しく、富士山測候所開設以来初めてではないかという。同測候所員は「1回目の震度3の時は全員寝ていたが、揺れに突き上げられ全員起きてしまった。しかし頂上にいた登山者や近くの山小屋に聞いたところ、地震に気付いた人はいなかった」と話している。
25日午後、会見した気象庁地震火山業務課の鈴置哲朗課長は「測候所員が山頂周辺を観察したが特に変化はなく、山腹の傾斜計も変わりはない。噴火に向かっている兆候は見られず、火山噴火予知連絡会の下鶴大輔会長も同意見だ」と説明した。しかし珍しい地震のため気象庁は25日、富士山測候所と、ふもとの静岡県御殿場市に地震計を設置し、1週間程度推移を見ることにした。
富士山はかつて山頂噴火、山腹噴火を繰り返したが宝永4年(1707年)から翌年にかけ、江戸(東京)にまで多量の火山灰を降らせた宝永大噴火の後は活動を中止した。現在は「大沢くずれ」などの山腹の大崩壊が防災上、問題になっている程度。しかし、山腹に微弱ながら地熱地帯があるなど死火山ではなく、気象庁、東大などが随時観測をしている。
富士山は26日に山じまい。この7、8月に5合目まで登った人は150万人(うち5合目以上は19万7000人)、25日だけで1000人が5合目以上まで登った。【当時の紙面から】
(1987年8月26日付 山梨日日新聞掲載)