雪崩で指導所全壊 富士山6合目 有料道路も崩落 大雨、気温上昇が引き金
8日午前10時45分ごろ、富士山6合目の山小屋から「土砂を伴った雪崩があり、6合目安全指導センターが崩壊した」との連絡が県にあった。管理している県や富士吉田市などの担当者が確認したところ、6合目付近で雪と土砂が混ざり合って崩れた跡があり、同センターが全壊したほか、土砂を防ぐ土塁や隣接する山小屋の一部も被害を受けていた。県営富士山有料道路でも3箇所で土砂などが崩れているのが確認された。8日の県内は強い雨に見舞われた上、気温も9ー10月並に上昇。積もっていた雪が浮いて崩れる「底雪崩」が起きた可能性が高いとみられている。
県観光課などによると、雪崩は鉄骨平屋建て約86平方メートルの同センターを直撃。鉄骨が曲がり、建物を押し流すような状態となった。土砂や石は天井付近までたい積していた。落石などから守るため、溶岩を使って設置されている土塁(長さ約20メートル、高さ約4メートル、厚さ約2メートル)も4分の3ほどが押しつぶされていた。隣接している「雲海荘」のふろなども壊された。また、登山道も埋まったとみられる。
富士山有料道路では、5合目ロータリーから下約2キロの間で、坂下駐車場や4合目付近などで土砂や樹木を巻き込んだ崩落があった。大きい場所では幅約100メートルにわたって車道をふさぎ通行不能となっている。
県によると、安全指導センター、有料道路とも復旧の見通しは立っていない。「有料道路の年内復旧は絶望」としている。
有料道路沿いにはハクサンシャクナゲ、シラビソなどの高山植物の群落があり、被害が広範囲に及んでいるとみられる。5合目直下では、なぎ倒された樹木も相当数に上っている。
同課などによると、同日午前8時の山頂の気温はマイナス0.5度。この時期の山頂の気温は暖かくてもマイナス10度以下となることが多く、かなり気温が上昇していた。また河口湖測候所によると、午前8時半からは12月の10分間の雨量としては観測史上最高の4.5ミリの強い雨が降った。たい積していた雪が浮き上がった状態になり、土砂を伴った「底雪崩」が発生したとみられている。
富士山安全指導センターは昭和55年8月、吉田大沢砂走りで死者12人を数える大規模な落石事故があったため、登山者指導のため県が昭和56年、6合目(標高約2400メートル)に設置した。同課によると、雪崩などによる被害は初めてという。県、富士吉田市などは9日午後にも現地へ向かい同センターの被害状況などを詳しく調査することにしている。
甲府地方気象台によると、同日の県内は、低気圧が日本海を通過したのに伴って、南から暖かい空気が流れ込んだため気温が上昇、7日から降り始めた強い雨が早朝まで続いた。山中湖では降り始めから8日午前9時までの雨量が132ミリを記録した。河口湖でも12月1カ月間の平年雨量(40ミリ)とほぼ同じ39ミリとなった。最高気温は甲府で20.5度、河口湖17.6度と、平年を8度以上上回った。【当時の紙面から】
(1992年12月9日付 山梨日日新聞掲載)