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2018.1.14 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 1月 /

富士山地下活動 昨秋から活発化 「低周波地震」急増

 地下のマグマの動きに関連するとされる「低周波地震」が、昨年10月から富士山周辺で急増している。気象庁の観測データによると、これまで富士山における低周波地震の発生は毎月数回から数10回だったが、昨年10月から3カ月連続で100回以上観測され、3カ月間だけで約500回に上った。気象庁は「火山性微動などは一切なく、低周波地震の増加だけでは火山活動の前兆とはいえない」とみており、昨年から噴火対策に力を入れ始めた地元自治体も「特別に警戒する状況ではない」と平静に受け止めている。一方、文部科学省(旧科学技術庁)防災科学技術研究所は「マグマの動きが活発化しているのは確か。今後、火山性微動や地殻変動などの異常現象が確認されないか、注意を払っていきたい」と富士山の動きを注視する考えだ。

 低周波地震は、通常の地震より震動の周期が長く、地下のマグマや熱水の活動を示すとされる。地震の規模を示すマグニチュード(M)は有感地震より小さく、M2を上回るケースは少ない。

 1991年のフィリピン・ピナトゥボ火山の噴火や、1998年の岩手山の火山活動では事前に低周波地震が多発したが、「火山活動すべてに付随するわけではない」との専門家の意見もある。

 気象庁火山課によると、富士山測候所では1988年から富士山の低周波地震を観測しているが、発生頻度は毎月数回から50回程度で、一度も観測されない月もある。

 しかし、昨年10月には133回と、9月の32回と比べて大幅に増加。11月も221回、12月にも143回と3カ月連続で100回以上に上った。マグニチュードは、9月まで大半がM2未満だったが、10月以降はM2.2を最高にM2を上回る低周波地震が9回となっている。

 気象庁とは別に低周波地震を観測している防災科学技術研究所(茨城県つくば市)によると、低周波地震の震源地は富士山頂の北東2-3キロ付近で、震源の深さは15キロを中心とした地点が多い。

 同研究所の鵜川元雄・火山噴火調査研究室長は「必ずしも火山活動に結びつくものではないが、約20年の観測期間で、昨年10月以降の低周波地震は過去通算の約3割に当たる」と指摘し、「異常な地殻変動などマグマ上昇の兆候は全くないが、富士山直下でマグマの動きが活発化した、とはいえる。今後は地盤の傾斜変動に異常がないか注目したい」と話している。

 また、気象庁は「震源が浅くなり、地殻変動が起きてくると噴火につながる恐れがあるが、現時点で震源は15キロ程度と深く、火山性微動も一切ない。今回の低周波地震だけで噴火に直結する現象とはいえない」としている。

 一方、富士北ろくなど県内では、昨年3月の有珠山噴火を契機に、富士山の火山防災意識が高まっている。富士吉田市や南都留郡河口湖町で昨年初めて富士山噴火を想定した防災訓練を行ったが、低周波地震の増加に対する地元自治体の受け止め方は冷静だ。

 河口湖町は「特別に警戒する状況ではない。観光客からの問い合わせや予約キャンセルも全くない。宿泊客の避難誘導訓練などを重ね、防災体制を確立することが先決」、同郡山中湖村は「低周波地震とマグマの動きに関する正確な知識が広まってきており、不安感はない。今はむしろハザードマップの早期作製や観測体制の強化こそ優先されるべきだ」としている。

 県環境科学研究所の輿水達司・地球科学研究室長は「データ的には確かに異常だが、噴火に向かう動きか、中長期的にみた数値上の『ゆらぎ』かは不明。80年代後半にも低周波地震が相次いで『火山活動か』と騒がれた。慎重に観測していきたい」と話している。【当時の紙面から】

(2001年1月14日付 山梨日日新聞掲載)
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