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御嶽山の教訓


安否確認、手段の確立を

 58人が死亡し、戦後最悪の噴火災害となった御嶽山(長野、岐阜両県)噴火。麓の長野県王滝村の総務課長で、災害対応に当たった栗空敏之さん(62)に噴火時の経験や課題などを聞いた。

 【写真】災害対応に亜当たった当時を振り返る栗空敏之さん。「住民も含めて当事者意識を持つことが大切」と語る=長野県王滝村

 -噴火直後の対応は。

 「登山者の安否確認が難しかった。御嶽山には長野、岐阜両県にいくつも登山道があり、9月に入ってからも、たくさんの登山者が山に入っていた。山小屋に電話をして確認したが、全部で何人いるのか把握できなかった」

 -噴火対応マニュアルはあったか。

 「村の防災計画で噴火対応も位置付けていたが、あくまでも村民が対象で、観光客や登山者は対象にしていなかった。外部の人にどう対応するかは見直さざるを得なくなった。どれだけの登山者がいて、どこの誰が来ているのか、把握することは初動で最も基本になる部分だ」

 -噴火から4年が経過した。現状は。

 「名古屋大の研究機関が火山を監視するなど、観測体制は整いつつある。噴火当時は長野、岐阜にまたがる自治体で意思疎通がなかなか取れなかったが、噴火後に火山防災協議会が設立されてからは広域的に連携がとれるようになってきている」

 -教訓は。

 「噴火の形態、規模によりそれぞれだとは思うが、一番大切だと感じたのは安否を確認する手段を確立させること。登山者をしっかり把握するのは対応する地元自治体としては鉄則。被害把握により適所に捜索隊を送ることができる。安否を早く把握するには、入山者を確認するゲートなどを設ける必要がある。安否が確認できなければ、発見に時間がかかる」

 「王滝村は観光が主産業で、以前は噴火対策がタブー視されていたが、早く動いて予算を付けて対策を取るべきだった。安全を確保することが観光につながるのが理想。ただ人に来てもらえばいいではなく、登って安全という形にしないといけない」

 -ハード面の対応は。

 「シェルターのような登山者が逃げる場所の確保は必要だ。御嶽山噴火でも山小屋に避難した人は助かっている。ヘルメットはどこの山でも必要だ。活火山と言われているところは着用を当たり前にしないといけない。それだけで命が助かることもある」

 -対応についての教訓は。

 「噴いたときに被害を最小限にとどめるのが自治体の使命。関係する自治体の情報共有が必要で、山の歴史や噴火の危険性を伝える人材育成も大切だ。富士山も同じだと思うが、噴火は避けては通れない。山の恩恵で生きてきた以上は良くも悪くも山を敬い、対策を取っていくしかない。みんなで情報を共有して対策を練る。知事や市町村長だけではなくて、住民全員が当事者意識を持たないといけない。『そら見たことか』となる前に意識を高く持たないといけない」(おわり)


 【「守る命」富士山噴火に備える】
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