富士山吉田口・須走口下山道の分岐点
山梨県側の吉田口と静岡県側の須走口の両下山道(下山ルート)は、頂上から8合目までは共通の下山道となっている。
山梨県観光資源課などによると、富士山の下山道は8合目の山小屋「江戸屋」付近で、山梨県側の吉田口と静岡県側の須走口に分岐。分岐付近の道は山小屋への進入路と見分けがつきにくく、道を間違えて須走口へ向かう登山者が少なくとも年1000人程度いたという。
こうしたケースを受け、2009年には各登下山道の案内標識を統一。その中で登下山道名を色分け(吉田口=黄、須走口=赤)し、4か国語の表記を行った。また、2013年には下山道の分岐点に音声案内装置の設置や誘導員の配置、チラシを配布して注意を呼び掛けるなど対策を講じてきたが、世界遺産登録効果で増加した外国人を中心に例年以上に道を間違える人が増えた。
そこで、山梨、静岡両県は2014年夏に分岐点の位置を変更することを決定。二つの下山道が見渡せるよう、新しい分岐点を江戸屋前を通過した20~30メートル吉田口側に設置した。
この結果、開山期間中に間違えて須走口に下山してしまった人は2013年夏は1070人だったが、2014年夏は784人に減った。(県観光資源課調べ)
ところが間違いが減った一方で、分岐点を山小屋の先にしたことで、吉田口、須走口に向かう登山者全員が山小屋前を通過。山小屋前の道が狭いこともあって大渋滞が発生し、危険な状況も見られたという。このため、2015年夏に安全を優先して元の地点に再移動した。2014年夏の分岐点は、須走口に向かうルートをロープで閉鎖した。
ただ、道の間違いが多い地点に戻すため、山梨県は対策にも力を入れる。下山する人が多い時間帯に誘導員を配置。分岐点のほか、分岐点のすぐ下でも、誘導員が登山者に道を間違えていないか声を掛ける。また黄色で吉田口、赤色で須走口を示した案内板を設置し、音声案内も3カ国語(日本語・英語・中国語)で流す。富士吉田市も6合目安全指導センターで、安全登山を呼び掛けるチラシに分岐点について案内する。