富士山の平成 重大ニュース [2]
◆山頂の測候所無人化(平成16年)
日本最高峰の台風観測のとりでとして戦前から活用されてきた富士山頂の剣が峰(標高3776メートル)の富士山測候所は2004(平成16)年10月1日、72年間の有人観測の役目を終えて無人化された。
1895年に私設の観測所を設けて越冬観測を試みた気象学者・野中到と妻千代子の志を継ぎ、1932年に中央気象台(現気象庁)によって常駐の有人観測が始まった。世界最大級の気象レーダーを備え、災害から多くの人命や財産を救った。装備も物資も少なく、過酷な環境下での観測が続いた。
現在は認定NPO法人富士山測候所を活用する会が研究観測地点として利活用し、国内外の研究者たちが立地を生かした大気化学や高所医学などさまざまな研究を進めている。
◆ハザードマップ作成(平成16年)
かつて「休火山」と呼ばれた富士山の噴火対策は、平成の時代に大きく前進した。国や地元自治体は2004年、噴火時に想定される火口や溶岩流の範囲などを示した「富士山ハザードマップ」を作成。これを契機に周辺住民の避難計画が作られ、噴火を想定した訓練も行われるようになった。現在は富士山研究による最新の知見を踏まえた改定作業が進む。
麓に甚大な被害をもたらしてきた富士山の災害の一つに「スラッシュ雪崩」がある。雪が大量の土砂を含んで流れ下る現象で「雪代」といい、過去にはたびたび麓の市街地まで押し寄せた。近年も富士スバルライン寸断の被害が出ている。
続発する雪代に対し、途絶えているのが噴火だ。1707年の宝永噴火以来、300年以上“沈黙”が続き、専門家は「いつ噴いてもおかしくない」と口をそろえる。
噴火対策は麓の観光業に影響するとしてタブー視された側面もあったが、2000~01年に頻発した低周波地震が転機に。マグマ活動に連動しているとされ、山梨県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長(72)は「休火山との見方に慣れていた多くの人が、『富士山は生きている』と認識するきっかけになった」と振り返る。
政府と地元自治体は01年、富士山ハザードマップ作成協議会(後の富士山火山防災協議会)を設立し、専門家による検討委員会がハザードマップを作成した。過去の火口位置を基に火口ができる可能性の高い範囲を表示。溶岩が3時間程度で到達する範囲、噴石が落ちる範囲などとともに、噴火時にはすぐに避難が必要なエリアを示した。
検討委員を務めた藤井所長は「人命を守るため、噴火時にどう住民を避難させるのか。その基礎資料になった」と意義を強調し、地元住民の意識変化も評価する。「火山として富士山を意識するようになり、きちんと情報を伝えることが観光地の信頼につながることも理解された」
国と地元自治体は、20年度を目標にマップの改定に取り組んでいる。04年以降、山梨側の市街地近くで新たに火口が確認され、静岡側でも想定範囲外で火口が見つかった。火口の想定範囲や被害範囲を広げる方向で検討が進む。
「ハザードマップは次の災害を予想したものではない、と理解しておくことが大事だ」と藤井所長。噴火想定を変えながら訓練を繰り返す重要性を説く。火山の麓に生きる人々にとって、ハザードマップは「減災」と「共生」への指針でもある。
日本最高峰の台風観測のとりでとして戦前から活用されてきた富士山頂の剣が峰(標高3776メートル)の富士山測候所は2004(平成16)年10月1日、72年間の有人観測の役目を終えて無人化された。
1895年に私設の観測所を設けて越冬観測を試みた気象学者・野中到と妻千代子の志を継ぎ、1932年に中央気象台(現気象庁)によって常駐の有人観測が始まった。世界最大級の気象レーダーを備え、災害から多くの人命や財産を救った。装備も物資も少なく、過酷な環境下での観測が続いた。
現在は認定NPO法人富士山測候所を活用する会が研究観測地点として利活用し、国内外の研究者たちが立地を生かした大気化学や高所医学などさまざまな研究を進めている。
◆ハザードマップ作成(平成16年)
かつて「休火山」と呼ばれた富士山の噴火対策は、平成の時代に大きく前進した。国や地元自治体は2004年、噴火時に想定される火口や溶岩流の範囲などを示した「富士山ハザードマップ」を作成。これを契機に周辺住民の避難計画が作られ、噴火を想定した訓練も行われるようになった。現在は富士山研究による最新の知見を踏まえた改定作業が進む。
麓に甚大な被害をもたらしてきた富士山の災害の一つに「スラッシュ雪崩」がある。雪が大量の土砂を含んで流れ下る現象で「雪代」といい、過去にはたびたび麓の市街地まで押し寄せた。近年も富士スバルライン寸断の被害が出ている。
続発する雪代に対し、途絶えているのが噴火だ。1707年の宝永噴火以来、300年以上“沈黙”が続き、専門家は「いつ噴いてもおかしくない」と口をそろえる。
噴火対策は麓の観光業に影響するとしてタブー視された側面もあったが、2000~01年に頻発した低周波地震が転機に。マグマ活動に連動しているとされ、山梨県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長(72)は「休火山との見方に慣れていた多くの人が、『富士山は生きている』と認識するきっかけになった」と振り返る。
政府と地元自治体は01年、富士山ハザードマップ作成協議会(後の富士山火山防災協議会)を設立し、専門家による検討委員会がハザードマップを作成した。過去の火口位置を基に火口ができる可能性の高い範囲を表示。溶岩が3時間程度で到達する範囲、噴石が落ちる範囲などとともに、噴火時にはすぐに避難が必要なエリアを示した。
検討委員を務めた藤井所長は「人命を守るため、噴火時にどう住民を避難させるのか。その基礎資料になった」と意義を強調し、地元住民の意識変化も評価する。「火山として富士山を意識するようになり、きちんと情報を伝えることが観光地の信頼につながることも理解された」
国と地元自治体は、20年度を目標にマップの改定に取り組んでいる。04年以降、山梨側の市街地近くで新たに火口が確認され、静岡側でも想定範囲外で火口が見つかった。火口の想定範囲や被害範囲を広げる方向で検討が進む。
「ハザードマップは次の災害を予想したものではない、と理解しておくことが大事だ」と藤井所長。噴火想定を変えながら訓練を繰り返す重要性を説く。火山の麓に生きる人々にとって、ハザードマップは「減災」と「共生」への指針でもある。
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