「富士山」名前の由来
(「ふじさん」なまえのゆらい)
なぜ「ふじさん」と呼び、「富士山」と書くようになったのか、謎のベールに包まれている。謎解きの本だけでも数多く出版されていて、定説はない。まず、なぜ「ふじ」と発音するのか。アイヌ語で火の山を指す「ふんち」「ぷし」、朝鮮語で火を意味する「ぷっと」「ぷる」、マレー語の素晴らしいを指す「ぷし」、古代日本語で斜面や垂れ下がりを指す「ふじ」、おわんを伏せる「ふせ」など、様々な説が出されている。
次になぜ「富士」と書くのか。記録で最初に登場する奈良時代の常陸国風土記には、「福慈」と書かれている。やや遅れて万葉集では「不尽山」「不士能高嶺」「布二能嶺」で登場。「富士」と書かれるのは平安時代初期の続日本紀あたりが最初となる。このほか「不死(不老長寿)」「不二(二つとない)」などとも書かれている。精神的な風土に由来を求める説も多い。かぐや姫の物語や徐福伝説に象徴される不老不死の神仙思想、ニニギノミコトの天孫降臨伝説。さらに火を静める木花咲耶姫をまつった浅間神社信仰と結び付ける考えもある。特に中国の神仙思想が深く関わっているとの見方が強い。「富士山はなぜフジサンか」(谷有二 山と渓谷社)は、古代日本の国家成立の過程で「富士山」に統一されていったと書いている。
もう一つ、地元山梨びいきの主張。万葉集にも登場する「なまよみの 甲斐の国 うち寄する 駿河の国と」の「よみ」と「かい」が、「ふじさん」に結び付く。「よみ」は「黄泉(死者の国)」。「かい」は卵の意味もある。甲斐の国は不老不死の神仙の地で、「死者のよみがえる地」と考えられていた。その国に境を接する霊峰が、「不死」「よみがえり」の山として位置付けられていったというのである。
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