富士山の環境美化・保全活動を展開
富士山の環境美化・保全活動を展開している「富士山をきれいにする会」(野口英一理事長)。同会が発足したのは、東京オリンピックを2年後に控えた1962年。前年に来日した米国のユードル内務長官が富士山に登った際、同行した登山家が、美しい景観とは裏腹に実際は“ごみの山”の現状を嘆いた。これを知った当時の野口二郎山梨放送社長が「外国人に汚い富士山を見せられない」と、山梨県や県観光連盟、富士北麓の市町村、団体、企業の協力を得て同会を設立。「国民運動として国土美化運動の先頭に立ち、日本のシンボル、世界の山として愛され親しまれている富士山の美化活動にまい進する」と決議した。同年、山梨日日新聞社がこの運動キャンペーンで新聞協会会長表彰を受けた。以来、富士山の環境美化を推進し「富士山をきれいにする運動」を展開、その志は現在に受け継がれている。2度目の東京オリンピックが開かれた2021年には設立から60年を迎えた。半世紀以上の歴史を刻みながら、市民運動は着実に定着。富士山の世界文化遺産登録や、環境に対する意識の高まりの中、活動はますます広がりつつある。
富士山をきれいにする運動は、毎年5~6月に富士吉田市の北口本宮冨士浅間神社で富士山環境美化清掃開始奉告祭を行い、8、9月に富士山環境美化クリーン作戦(前期・後期)を実施。10月に富士山環境美化清掃終了奉告祭を同神社で行い、活動の成果を確認している。夏山シーズンでにぎわう富士山5合目周辺。8月初めの前期クリーン作戦の日は、ビニール袋を片手に、「富士山をきれいにしましょう」と書かれた黄色いたすきをかける人たちが、ごみを拾いながら、登山者や観光客に富士山の環境美化を呼び掛ける。富士山をきれいにする会が半世紀以上にわたって行っている清掃活動は、麓での活動を含め、2022年度までに延べ1万1298団体、143万8192人が参加し、5376トンのごみを回収。
環境美化活動のほか、1966年から毎年5月には、麓の富士吉田市、富士河口湖町、忍野村、山中湖村、鳴沢村、西桂町、身延町で富士山環境美化植樹祭を持ち回りで開催。サクラやモミジ、ツツジ、アジサイなど、2023年度までに市町村に贈った苗木の総数は8万6842本となっている。河口湖畔にモミジ、富士吉田市の新倉山浅間公園に桜を植樹するなど、名所の創出にも貢献している。また、富士山の保全をアピールするフォーラムの開催なども展開している。
活動内容を拡充するための組織変更も進め、同会は1982年に任意団体から財団法人に、2011年4月には公益財団法人に移行した。より公益性の高い活動として認められることで、企業や県民らに協力を求めやすいなどのメリットがあるという。
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2023年度は、5月17日に富士吉田・ふじさんミュージアムパークで富士山環境美化植樹祭を行った。また、5月24日に富士吉田・北口本宮冨士浅間神社で富士山環境美化清掃開始奉告祭を、富士山環境美化クリーン作戦は8月5日(前期)と9月8日(後期)にそれぞれ実施する予定。