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御嶽山被害の教訓


■減災へ「火山を知る」

 標高3000メートルを超える活火山。霊山として知られ、多くの登山者や観光客が訪れる-。御嶽山は富士山との共通点がある。もし富士山が噴火したら、同規模の火山災害となるのだろうか。まず、御嶽山噴火で何が起きたのか振り返る。

◎降り注ぐ噴石

 噴火は2014年9月27日午前11時52分ごろ発生、58人が死亡、5人が行方不明になった。生存者の証言によると、ごう音とともに噴煙が上がり、直後、辺りは火山灰に包まれ真っ暗に。その中で噴石が降り注いだ。

 吉本充宏主任研究員(45)はこの噴火を、マグマが関わらない「水蒸気噴火」と説明する。地中でマグマに熱せられた地下水が沸騰して表面の泡がはじけ、水蒸気として噴出した瞬間だという。

 水蒸気噴火はほとんどが小規模で、国内では最も起きやすい噴火。昨年は箱根山・大涌谷、00年には北海道・有珠山で起きたが犠牲者はいなかった。それにもかかわらず、今回大勢の犠牲者が出たのは、気象庁が発表する「噴火警戒レベル」が1(平常=当時)のまま、多くの登山者が警戒せずに山頂付近に集まったからだ。

 予兆が表れにくく、突然起きることがあるのが水蒸気噴火の恐さ。紅葉シーズンの晴れた週末、昼食時の山頂付近は、当時200人ほどの登山者でにぎわっていた。常松佳恵研究員(39)は「火口近くに最も人が集まる季節、時間帯に起きてしまったことが被害を大きくした」と話す。

◎新幹線の速度

 犠牲者58人のうち56人が噴石の直撃を受けるなどした「損傷死」。爆発に伴って火口の周りの岩石が吹き飛ばされ、登山者がいる山頂付近に降り注いだ。多くは火口から500メートル地点に落下。20センチ大であれば1.2キロ先まで到達した。常松研究員らグループのシミュレーションによると、着地した際の速度は最低でも新幹線と同等の時速298キロに達した。

 大半の登山者は御嶽山が活火山と知らず、噴火だという認識ができなかった。噴石が届くまで1~2分程度。山小屋に逃げ込む時間はあったが、その間写真撮影をしていて逃げ遅れた人もいるという。「御嶽山噴火から学ぶことは多い」と吉本研究員。「災害に遭遇した時の心づもり一つで初動が変わる。噴火に対する知識を備えてほしい」と呼び掛ける。

 御嶽山噴火では噴石とは別に、噴煙として一度上空に舞い上がった小さな石も降り注いだ。より粒子が細かい火山灰は風に運ばれ、山梨県内でも北杜市など一部で降灰が確認された。

 このほか、土石流を監視する国土交通省のカメラには山頂方向から谷間を流れる火砕流がとらえられている。通過後、樹木などが燃えた様子はなかったため、70~80度ほどの低温だったとみられ、それほど危険性が高いものではなかったという。

 噴火現象は降灰、噴石、火砕流など多岐にわたり、同時に起きたりタイムラグがあったり複雑に絡み合う。富士山では、どの現象が起きるのだろうか。


 【富士山防災 どう備えるか】
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