三角形の布飾りに込められた意味は?
山梨県の富士山麓地域で見られる、三角形の袋状に縫い合わせた布飾り「ヒイチ」。小正月行事や民家の軒先などで目にすることができる。この項では忍野村の例を紹介する。
忍野村でのヒイチは、1月14、15日の小正月を祝う道祖神祭りに合わせ、家内安全、商売繁盛、無病息災などの祈願を込めて制作される。祭りの期間中は、色鮮やかに飾りが施された道祖神に色紙やバケツなどとともに奉納される。祭りの最終日、「頭取(地元の子どもたちの代表)」を中心とした子どもたちが各家庭を廻って売り歩く。ヒイチの値段は大きさによって変わるが、5000円以上のものもあるという。各家庭では魔よけ、災難よけとして、玄関の軒先、車内などに1年間掲げる。
ヒイチは正方形の布からできているが、布の大きさや素材に特に決まりはない。底部分には芯となる竹ひごを通し、重みのためにもみ殻を入れる。小正月の時期になると地元の洋品店など布製品を扱う店ではヒイチ用の布を用意するところもある。
本来、結婚・出産などがあった家庭でヒイチを作るのがしきたりだったが、現在はヒイチを作ることができる人も少なくなったため、作り方を知る人や役員が製作を担当することも多い。
1年間飾ったヒイチは小正月の「どんど焼き」で、お正月飾りとともに焚き上げる。
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