「北麓に春」 厄除けを願う
富士北麓地域に春を呼ぶ行事で、厄除けの御利益があるとされる、山梨県富士吉田市下吉田の「愛染厄除地蔵尊大祭」。郡内地域で唯一の厄除け地蔵尊で、毎年2月13日正午から14日正午にかけて例大祭が行われ、無病息災や家内安全を祈願するため多くの人が詰めかける。期間中のみ地蔵尊の耳が開いて願い事を聞き入れ、厄難を逃れることができると伝えられている。
愛染地蔵尊の地蔵堂は1482年の建立といわれ、同じ下吉田の月江寺の末社堂の一つ。月江寺がここに等身大の地蔵菩薩を安置し、不浄払の尊者故精進場と申すとの由緒がある。ここは昔から俗に愛染または水丸尾といわれ、古道が通りこの道を鎌倉街道、富士道といい、道の南面には豊富な湧水が小池をなしていた。また富士山麓唯一の登山霊場で、月江寺、西念寺の精進場として知られ、関東各地からの富士参拝の導者は、この湧水で身を清め、かつ禅定して富士登拝の一歩を踏み出した。
江戸時代の寛永年間に、鳥居土佐守一族が帰依し、厄除けなどを祈願したことから、関東一円に知られたという。
現在の地蔵堂は1992年に建て替えられた。木造平屋建て約43平方メートル。棟続きで札所も併設されている。同年2月9日には落慶法要と、1933年の大改修以来60年ぶりの稚児行列が行われ、完成を祝った。
地蔵尊は、ヒノキの寄せ木造りの木像で高さ約1.6メートル。地蔵堂と同年に造られ、大規模な修復は1885年が最後と伝えられていた。頭や胸、首などに傷みが目立つようになったため約130年ぶりに本格的な修復作業を行うことになり、2016年3月から京都市の業者に預けられた。今回はいったん分解した上で、約1年かけて欠損している部分の修復を行いながら組み立て直し、色を塗り直すなどした。2017年1月、地蔵尊は京都市内から地蔵堂に戻り、安置法要が行われた。
また、2017年の例大祭では、主催する東町連合自治会が富士山の間伐材で作ったお守りを販売。お守りは表面に「愛染地蔵尊」、裏面に「厄除開運」「交通安全」「家内安全」などと彫り込んだ木札に、鈴とひもを付けた。
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2023年は、関係者のみで神事を行う。