富士山噴火におけるハザードマップ
ハザードマップは自然災害への備えを住民に進めてもらうため、想定される被災範囲や避難場所、経路などを示した地図。ハザードは英語で「危険の原因」や「障害物」を意味する。津波や土砂崩れ、噴火など災害の種類に合わせてさまざまな地図がある。自治体などが作成、住民に配布したり、インターネットで公開したりしている。
富士山噴火の被害を想定したハザードマップは、2000~01年に富士山で低周波地震が頻発したことをきっかけに、噴火災害に備えて2001年6月、富士山一帯の自治体と国が「富士山ハザードマップ作成協議会」を設立。同7月、同協議会の諮問を受けて学識者らによる「富士山ハザードマップ検討委員会」が発足。委員は地震、防災の専門家と山梨、静岡、神奈川3県と国の関係機関(総務省や国土交通省など)で構成。2004年に山梨県富士吉田市や静岡県御殿場市などの各地域版、観光客向け、防災業務用に「富士山火山防災マップ」を作成。火口のできる範囲や火砕流、噴石、溶岩などが達する危険のある範囲を示し、地域ごとの避難情報などが盛り込まれた。
2012年6月には新たに、山梨、静岡、神奈川3県が国や周辺自治体など約60の関係機関からなる「富士山火山防災対策協議会」を発足。マップの作成から15年近く経過した2018年7月、その間に富士吉田市街に近い「雁ノ穴」が火口であることが分かるなど、研究が進んだことなどを踏まえ、協議会内に「富士山ハザードマップ検討委員会」を設けて改定版の作成に着手。最新の知見や詳細な溶岩の流れ方をシミュレーションしてマップに反映。2020年3月には小規模噴火時の溶岩流と火砕流のシミュレーションを中間報告として公表。
2021年3月、噴火によって起きる「溶岩流」「融雪型火山泥流」「噴石」「降灰」「火砕流」について、新たに予想される被害を示した改定版を公表。山梨県に関係するマップは200近くに上る。中大規模の噴火による溶岩流の被害想定が初めて示された。到達範囲も旧マップから大幅に拡大。山梨県内は都留市までだった従来の想定を超え、新たに上野原市と大月市に到達する恐れがあることが判明。また溶岩流が到達する時間も早まり、西桂町や都留市には従来よりも大幅に早い5時間~7時間半程度で到達する可能性があるとした。
一方、協議会はハザードマップ改定に伴い3県と関係機関による広域避難計画を2022年3月にも見直す方針を確認。