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2020.8.19 所属カテゴリ: ふじさんクエスト / 社会・歴史 /

女人禁制時代に女性が富士山を遥拝した場所とは?

 山梨県富士吉田市上吉田5616。吉田口登山道の2合目を過ぎた辺りから細尾野林道に入り、1キロほど東南に登った場所にある「富士山遥拝所女人天上」。山が「神仏の宿る場所」として信仰の対象だった時代の名残で、富士山に女性が登ることが許されなかった江戸時代、女性の遥拝所としてにぎわった。

 富士山は1872年まで女人禁制だった。それまでは「女性が入峰すると修行の妨げとなる」などとされ、入山が許されたのは2合目の御室浅間神社までと厳しく規制。富士山誕生にちなむ60年に1度の「御縁年(庚申の年)」、麓で7日間の修行をした者だけが4合5勺の御座石浅間神社まで登ることができたという。2合目付近は樹木が茂り山頂を拝めないため、山火事で開けた同所を遥拝所にし、そこから山頂を拝んだ。江戸時代の「富士山明細図」には、「女人御来迎場」として、大石と鳥居2基が立ち、山頂と御来光をそれぞれ拝む女性たちの様子が描かれている。

 1980年、地元の「すその路郷土研究会」が場所を特定し、富士吉田市指定史跡に登録され、現在は碑が立つ。

 富士山信仰の文化や女人禁制の歴史を伝える貴重な場所だが、近年は木々が生い茂り、山頂を拝むのが難しくなっていた。そこで山梨県が2014年度に富士山で行った「おもてなし森林景観創出事業」で、山頂や麓の景色を損なっている樹木を伐採。これにより山頂が眺められるようになり、遥拝所としての姿を取り戻した。また、「すその路郷土研究会」も林道から女人天上に続く遊歩道を修繕した。

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