火山灰上の車両走行実験
富士山麓の静岡県側で2021年2月、富士山噴火を想定した火山灰上の車両走行実験を初めて行った。山梨と静岡両県を管轄する国土交通省中部地方整備局富士砂防事務所が実施し、両県の自治体関係者らが灰の上での走行を体験。厚さ5センチの灰の上ではほとんどの車両が斜面を上れたが、10センチで上れたのは四輪駆動のオフロード車のみ。国交省は今後の防災体制の参考にする考え。
同事務所が静岡県富士宮市内の管理敷地で実施し、両県の自治体関係者ら約40人が参加した。昨年の道路工事で出た富士山の火山灰と、鹿児島県桜島の火山灰をそれぞれ16立方メートル用意。傾斜を付けた約50メートルのコースを設け、路面にそれぞれの灰を厚さ5センチと10センチに分けて敷き詰めた。
同事務所や参加者の四輪駆動車など約10台がコースを走行。厚さ10センチの灰の斜面を走行できたのは四輪駆動のオフロード車のみで、前輪駆動の乗用車はタイヤにチェーンを装着した状態でも上れなかった。厚さ5センチではタイヤが灰にはまることもあったが、ほとんどの車両が斜面を上れた。後半は灰を水で湿らせて検証。粒が細かい桜島の灰は、水分で固まって進行しやすくなることが分かった。
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山梨県側では2021年10月から11月にかけて、市民向け車両運転体験会を富士吉田市内で開催。参加者は10センチ程度の火山灰が敷き詰められた直線道路や斜面を走り、タイヤが空転する状況を体験。
県が国土交通省富士砂防事務所の協力を得て、富士北麓公園駐車場に123立方メートルの火山灰を運び、傾斜やカーブ、直線など4コースを設置。江戸時代中期に起きた富士山宝永噴火時の火山灰と、桜島(鹿児島県)の火山灰、富士山5合目付近に位置する大沢崩れで発生したスラッシュ雪崩(雪代)の砂のコースを用意。火山灰によって粒径や性質が異なるため、複数の灰で走行への影響を検証している。
11月4日の体験会では約60人の住民が前輪駆動の乗用車に乗り、厚さ10センチ程度の火山灰を敷き詰めた直線道路や斜面を走った。斜面ではある程度の速度がないとタイヤが灰にはまりタイヤが空転。アクセルを全開にしても前進せず、ほとんどの車が後進した後、スピードを上げて登っていた。
県富士山科学研究所によると、実際に火山灰が降り積もり、大勢が車で避難する際、1台でも灰にはまって停車すると大渋滞につながる可能性があるという。同研究所はさまざまな車種で走行データの収集を進め、結果は県が策定する広域避難計画に反映させる。