秀麗な姿 構成資産が彩り
ユネスコ提出へヤマ場の年 「自然美」の扱いが焦点に
富士山の世界文化遺産登録に向けた山梨、静岡両県の取り組みは2010年、具体的な登録手続きを本格化させる。7月に文化庁に推薦書原案を提出する予定で、国連教育文化機関(ユネスコ)への提出に向けた、ヤマ場の年となる。一方、両県の協議では従来の価値証明に加え、昨年浮上した「自然美」の評価基準に対する扱いが定まっていない。方針決定が遅れた場合、手続きがずれ込む可能性もある。
朝日に染まる雲海に立つ富士山=山日YBSヘリ「ニュースカイ」(NEWSKY)から
推薦書原案策定に向けて両県や関係市町村は現在、富士山の文化・芸術的な価値を証明する神社、史跡などの構成資産候補の保存管理計画づくりを急いでいる。
構成資産候補は国指定の文化財の認定を受ける必要があり、各物件の指定に向けた作業が進む。昨年11月には青木ケ原樹海・原生林の国指定天然記念物の範囲拡大が文化庁に認められた。今後は富士山体、富士五湖、富士吉田市の御師の家「旧外川家住宅」などの文化財指定が進む見通し。
一方で両県は昨年9月に国際記念物遺跡会議(イコモス)の関係者を招いた国際専門家会議で、従来進めてきた「芸術・信仰」に特化した作業に対し、「自然美」の価値証明を行うことを求められた。
イコモスの提案に対して両県の学術委員会は「自然美」の価値証明を行うには、自然遺産を所管する国際自然保護連合(IUCN)の意向を確かめる必要があると判断。本年度中にIUCNから回答を求め、対応を決めることとした。
ただ、問い合わせは文化庁を通して行っているため、「回答が本年度中に間に合うかは不透明」(県学術委員)な部分もある。さらに、海外の専門家は富士山体の登録範囲を従来の想定より広げることを提案。陸上自衛隊北富士演習場も登録資産を包含する何らかの保全区域としての位置づけを検討すべきと指摘した。両県はこうした提案に対しても検討を進める考え。
横内正明知事は昨年11月定例県議会で「新たな作業に一定の期間を要する。準備スケジュールへの影響が最小限になるように努力する」と述べており、登録に向けた準備作業の進展が焦点となりそうだ。
(2010年1月1日付 山梨日日新聞掲載)