日本の宝を世界へ発信
13年登録へ準備進む
富士山の2013年の世界文化遺産登録を目指す山梨県と地元市町村の活動が正念場を迎えている。推薦書原案の文化庁への7月提出を目指し、県は昨年末まで富士五湖の文化財指定に必要な権利者の同意取得作業を続けた。今月中には、地元住民らが参加する「明日の富士五湖創造会議」を立ち上げる計画で、富士山を取り巻く美しい環境や景観維持に向けた論議も活発化しそうだ。
御坂峠付近の上空から望む富士山。手前は河口湖=山日YBSヘリ「ニュースカイ」(NEWSKY)から
県などは昨年7月、文化財指定に必要な権利者の同意取得が間に合わないことを理由に、当初目標としていた同月中の推薦書原案提出を1年先送りすることを決定。今年は仕切り直しの年となる。
昨年11月には世界文化遺産の構成資産の中核である富士山が国の史跡に指定された。わが国を代表する「信仰の山」として、歴史的価値にお墨付きを得た形となり、世界文化遺産登録に向けた作業は大きく前進した。この決定で、世界遺産を構成する資産のうち13件の文化財指定が完了する見通しとなった。
残るは富士五湖と御師住宅。このうち御師住宅は「地元の作業は終わり、国への申請に向けた調整段階」(県世界遺産推進課)で、富士五湖の文化財指定が「最後のハードル」となる。
課題となっている文化財指定に向けた同意取得に向けては、富士五湖で占用権や漁業権、水利権を持つ個人や団体計355件の同意を得る作業に全力を挙げた。山中湖(166件)は山中湖村、河口湖(133件)と西湖(25件)、精進湖(12件)は富士河口湖町、本栖湖(19件)は県が作業を担当。権利者を回り、年末まで同意書を集める作業を継続。県は文化庁と協議しながら、1月末の文化財指定申請を目指す。
県や地元町村は、富士五湖の将来像を検討するため、1月中にも湖ごとに「明日の富士五湖創造会議」を立ち上げる計画。会議には行政や地元住民、観光関連業者らが出席し、湖の桟橋設置のあり方、景観の美化、湖水の水位調節、静かな環境維持などをテーマに幅広く意見交換。参加者からの意見をもとに、2年後をめどに富士五湖の将来像をまとめる計画だ。
湖畔のボート業者らの間には、世界遺産登録に伴う規制強化への懸念が少なくない。経営などへの影響を考慮しつつ、「違法状態」にあるボート係留地や桟橋などの適正化をどう図るかが、議論の焦点になりそうだ。
一方、海外の専門家が、富士山の裾野に広がる陸上自衛隊北富士演習場など防衛施設について「保全区域として何らかの位置づけを検討すべきだ」と指摘したことを受け、文化庁は防衛省などと対応を検討中。「保全管理区域」と位置づける方向だが、「国防施設という性格などにより、大規模開発などの恐れはない」(県関係者)として、実質的な規制強化にはつながらない見通しだ。