文化遺産登録へ活動本格化
芸術、信仰…人々に感動刻む 国内外に誇れる日本最高峰
古くから芸術や信仰など幅広い分野で人々に影響を与えてきた富士山。山梨県が国内外に誇ることができる資産である。今も年齢や性別、国籍を問わず大勢の人たちを受け入れては、日本最高峰を極めた達成感をもたらしたり、円すい形の秀麗な山容が感動を与え、さまざまな思いを一人一人の脳裏に刻み続けている。単に「山梨の宝」「日本の宝」にとどまらず、「世界の宝」にするため、富士山の世界文化遺産登録活動が本格化している。
「朝、富士山が見えた時は良いことがありそうな気がします」「雪景色の富士山が大好き」「今年、山頂に登るぞ」-。県が昨年度、甲府・小瀬スポーツ公園で開いたパネル展「富士山と世界遺産」会場に設けられたホワイトボードには40枚近いメモ用紙が並んだ。子どもから大人まで来場者が書き込んだ富士山への思い。それは十人十色だ。
7月以降の夏山シーズン、富士山には毎年、数十万人が訪れる。日本の最高地点に立つために登る若者、白装束に身を包み信仰のために登る富士講信者、ツアーで訪れた外国人らが登山道を埋める。一人一人の目的や感じ方は異なっても、日本を代表する山である富士山にひかれて集まった点では変わりがない。
多くの人を魅了してやまない富士山を世界文化遺産に登録する動きは本年度に入って、さらに具体性を帯びてきている。県は、富士山ろくの市町村と連携し、遺産を構成する文化財や天然記念物など計41物件(静岡県側も含めると計66件)について、資産候補としての価値証明に必要な学術調査や、保存管理計画の策定作業などを進めている。
世界遺産登録をめぐっては近年、審査を厳格化する動きがみられる。だが県の世界遺産推進課は「富士山を人類共通の財産として後世に残すことは、県民はもとより日本人としての責務と言っても過言ではない」と意義を強調する。
(2008年7月1日付 山梨日日新聞掲載)