御師の家を建築へ 富士吉田市
江戸時代の農家も復元
富士吉田市が富士山のすそ野開発の一つとして計画している郷土館エリア(仮称)建設は、来年度予算で御師の家建築、江戸時代の農家復元などに7031万円を計上したことで、構想から2年半ぶりに具体化の一歩を踏み出した。同市はエリア内を(1)郷土の歴史、文化(2)産業(3)公園―の3ゾーンにわけ、順次整備していく。
郷土館エリアは、同市上吉田の国道沿いに53年にオープンした郷土館を中心に、総面積4万5000平方メートル。市の歴史と文化、産業を市民や観光客に紹介するとともに、公園的要素をもたせて市観光の拠点にする目的を持っている。しかし、予定地の用地交渉が難航、昨年8月にやっと全エリアの用地を確保した。
来年度予算にもったのは、3ゾーンのうち郷土の歴史、文化ゾーンが中心。御師の家建築が3320万円、江戸時代の農家復元が1711万円、エリア内整備が2000万円となっている。このほか関連で郷土館の展示品購入、地下収蔵庫拡充に1449万円を計上した。
御師の家は国の重要文化財となっている小佐野家などを参考にして建設する。木造平屋建ての330平方メートルほどになる予定で、間取り、庭、門構えなど往時をしのばせるものになる。市教委は、この建物を富士講を中心とする富士山信仰を観光客などに伝える拠点にする考えだ。
また、江戸時代の農家は、昨年末に同市下吉田で見つかり、解体して保存してある武藤家を復元する。当初、この農家復元は59年度の予定だったが、武藤家の発見で2年早まった。このほかエリア内の整備として、近くの鐘山の滝を含めた散策道の新設、駐車場などの拡幅を行う。
郷土館エリアは、山中湖と河口湖にはさまれ、通過観光に悩む同市の浮上構想の一つ。歴史、文化ゾーンのほかに、市の主要産業織物を紹介する産業ゾーン、憩いの場の公園ゾーンがある。産業ゾーンについては、織物の工程、製品、歴史を集めた物産館の建設構想がある。市は「すそ野開発は、この郷土館エリア。小倉山や富士浅間神社の“静”と北ろく大規模公園などの“動”を結びつけた立体化を図る」と話している。 【当時の紙面から】
(1982年3月7日付 山梨日日新聞掲載)