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富士山世界遺産センター(山梨)

 1970年11月、富士山北麓において唯一の観光利用案内施設として、山梨県が河口湖町(現・富士河口湖町)に「県立富士ビジターセンター」を開設。1998年7月、建物の老朽化および施設・内容を拡充させる形で敷地内に新たに建設。2012年6月には、翌年の富士山世界文化遺産登録実現を見据え「富士山世界遺産センター」の開設を決め、新たな建物の設置場所を富士ビジターセンター敷地内に決定。2015年1月着工、2016年完成。同年6月の開館に際し、新館を「富士山世界遺産センター南館」と命名。一方、富士ビジターセンターは「富士山世界遺産センター北館」に名称変更された。富士山の持つ多様な自然美を伝えながら、富士山の文化的価値を分かりやすく発信するのが役割。

南館

南館

 南館は鉄筋コンクリート一部鉄骨造り一部2階建てで、延床面積は約1500平方メートル。

 展示の目玉となるのが「冨嶽三六〇(ふがくさんろくまる)」。吉田口登山道の馬返しより上の富士山を模したオブジェで、台座は直径約15メートル、高さ約3メートル。来館者は富士山5合目の「御中道」になぞらえた2階の回廊を歩き、全方位から見学できる。壁面には富士山の地史だけでなく、伝説、芸術などもまとめた年表があり、歴史を学べる。

 冨嶽三六〇を覆う強化和紙には、さまざまな色の照明が当たり、富士山の四季や自然を再現。オブジェ正面の大型スクリーンの映像と連動し、富士山の自然と人との関わりを表現する。オブジェ内側には「胎内ビジョン」と呼ばれる3面スクリーンがあり、富士山の信仰や芸術、伝承をテーマにした映像が流れる。

 2017年には世界から共感される展示物として、「COOL JAPAN AWARD(クール・ジャパン・アワード)2017」を受賞。同アワードは日本国内の魅力を発掘しようと、外国人が審査員を務めていて、県内からの受賞は初めて。

 1階の床には、富士山を中心にした直径約20メートルの地図が描かれ、各地から富士山を訪れる巡礼路や世界遺産の構成資産を紹介。円形の展示空間をかたどる壁面にも、世界、日本各地の「ご当地富士」、富士山の自然史、地史などの解説を展示する。また、吉田口と大宮・村山口(富士宮口)の登山道を麓から山頂まで登る映像を短縮し、登山を疑似体験できるほか、江戸時代の登山者の日記を基に当時の登山を再現したアニメもある。

 こうした展示は約30種類に上る。より理解を深めてもらおうと、県は専用アプリを開発し、世界遺産センターでスマートフォンやタブレット端末を活用した7言語対応の展示案内、AR(拡張現実)による情報提供などのサービスを展開。入口で端末にアプリをダウンロードして、展示にかざせば、手のひらに解説や映像を得られる仕組み。最新の技術を用いて、利便性だけでなく来館者に楽しみも提供する。

 1、2階を貫く壁面には、画家山口晃さんが描くシンボル壁画「冨士北麓参詣曼荼羅」が掲げられている。横7.7メートル、縦5.4メートルの巨大壁画。日本の伝統的な大和絵の手法を取り入れた作風で、夏の富士山を山口さんの視点で表現し、その迫力は来館者を引きつける。

 センター前の広場にある大きな羽の造形は、国内外で人気の「エンゼルウイング」のフォトスポットとして関心を集める。壁面に横5メートル、縦1.5メートルのカラフルな羽のパネルが貼られていて、中央に立って写真を撮ると天使の羽が生えたように映る。

 2022年3月、南館展示室をリニューアル。VR(仮想現実)を使った展示のほか、解説文や関連画像をスマートフォンで見られるシステムを導入。

 VRは御師の家や北口本宮冨士浅間神社、御中道など、参詣者がかつて歩いた場所を巡る疑似体験が可能。展示パネルに付いているタグにスマートフォンを近づけると、展示物の詳細情報や関連画像を見られる。展示パネルは分かりやすさを重視し、専門用語をできるかぎり避け、外国人になじみのない言葉を丁寧に説明している。

 外国人観光客や教育旅行の生徒らに向け、より深く富士山について学んでもらおうとリニューアルを企画した。

北館

北館

 北館は鉄筋コンクリート2階建てで、延べ床面積は約1670平方メートル。1階には「富士山の自然」をコンセプトにした展示室を中心に、インフォメーションコーナー、県産品販売ショップ、イベントスペースなどを、2階には展望広場やカフェ、研修室などをそれぞれ設けている。

 メーンとなる展示室は、2021年3月に大規模なリニューアルを実施。広さ約200平方メートル、新型コロナウイルスの感染予防の観点から、壁を取り除き動線を確保。ライトアップを変更し、明るい雰囲気とした。世界文化遺産富士山の構成資産を紹介する立体的なオブジェなど約120点を展示。富士山の成り立ちや溶岩の種類、気候の特徴を解説するパネルにはカラーイラストを追加し、分かりやすく解説。富士山が噴火した際の溶岩や火山灰の実物も展示し、実際に溶岩に触れて重さを体感できる。植物の垂直分布では、山頂付近にもイワツメクサなどが確認されたことを紹介するなど研究成果を更新。

 また年間を通して、富士山や山麓に関する教養講座や写真展などの企画展示を開催。センターに隣接する自然遊歩道「自然観察園」では、ミニエコツアーも実施。館内には、富士山ボランティアセンターなどもあり、スタッフが常駐している。

所在地

 ◆山梨県富士河口湖町船津6663-1

開館時間 (両館共通)

 ◆9:00~17:00 (3月~6月)
 ◆8:30~18:00(7月~8月)
 ◆9:00~16:30(12月~2月)
 ※最終入館は各閉館時間の30分前

入館料 (両館共通)

 ◆無料

休館日

 ◆【南館】毎月第4火曜日(祝日の場合は翌日)
 ◆【北館】無休
 ※ともに臨時休館日あり

アクセス

 ◆【電車・バス】富士急行線河口湖駅から鳴沢・精進湖・本栖湖周遊バス(ブルーライン)で「富士山世界遺産センター」下車
 ◆【車】中央自動車道河口湖ICまたは東富士五湖道路富士吉田ICから国道139号経由すぐ


イベント情報

令和5年度「世界遺産富士山講座」(第1回)

【開催概要】
 ◇最新の調査研究を通じて「世界遺産富士山」の魅力について紹介する講座。
【開催日時】
 ◇ 2023年6月17日(土) 13:30~15:10
【開催会場】
 ◇ 同センター 北館2階研修室
【開催テーマ】
 ◇「富士山登山口集落の民俗」(仮)
【申し込み】
 ◇事前予約制
【申し込み・問い合わせ】
 ◇同センター調査研究スタッフ
  TEL : 0555-72-2314 /
  URL : https://www.fujisan-whc.jp/

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