富士山噴火備え共生探る
山梨県富士山科学研究所など、山梨、静岡、神奈川3県の学術機関の職員らが富士山噴火を火山学、歴史・考古学の視点から考察した「富士山噴火の考古学 火山と人類の共生史」(富士山考古学研究会編、吉川弘文館)が2020年6月刊行された。各県で発掘調査された縄文~近世のテフラ(火山灰、軽石など)が堆積した噴火罹災遺跡を詳細に検証。火山と人間の共生の在り方や展望と課題を探っている。
「富士山噴火史の研究」「富士山噴火による罹災遺跡」「これからの富士山との共生」の3部構成。第1部では歴史・考古学と火山学の視座から、富士山の成り立ちと噴火史を振り返る。第2部では山梨、静岡、神奈川3県の遺跡で発掘されたテフラの堆積状況などを分析。第3部では、富士山災害史研究の今後と課題を展望する。
山梨県関係では6氏が執筆。県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長は、火山に関する基本的事項と富士山で起こり得る噴火現象を解説。未来の噴火に備えるため、火山学と考古学の連携が望まれると提言する。同研究所の吉本充宏さんは、富士山の成立と新富士火山の活動を年代順に解説している。
県内の噴火罹災遺跡については、富士吉田市教委の篠原武さんが縄文時代、大月市教委の稲垣自由さんが弥生~古墳時代、富士河口湖町教委の杉本悠樹さんが古代を担当。遺跡ごとに調査結果を解説している。県文化振興・文化財課の保坂和博さんは、中近世の雪代災害について論考を寄せた。
コラムも数多く収録。巻末には、特徴的なテフラの堆積が確認された山梨、静岡、神奈川3県の考古遺跡一覧表も掲載している。
A5判、352ページ。4950円。
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