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富士山を世界遺産に

山梨県知事 横内 正明

 山梨に暮らす私たちにとって、富士山は身近な存在です。自宅の庭先から眺める富士、通勤途中の車窓に映る富士、農作業の合間に眺める富士など、日常のさまざまな場面に富士山は力強く、圧倒的な存在感を持ってたたずんでいます。

 私たちにとっては当たり前のような存在である富士山ですが、県外からのお客様が富士山を見て歓声を上げる姿などを目にすると、富士山のそばに暮らしていることへの誇らしさを実感するとともに、富士山が日本人にとって特別の感慨をもたらす山であることをあらためて感じます。

 6月27日に、ユネスコ世界遺産委員会において、富士山を世界遺産暫定リストに登載したことが報告されました。世界遺産候補として正式に認められ、登録に向けた第一歩が踏み出されたことになります。暫定リストの登載に当たっては、富士山の秀麗な姿が多くの芸術作品の主題となるなど、豊かな自然や美しい景観の中で文化をはぐくみ、日本人の信仰や美意識などと深く関連していることが評価されました。このように、富士山が世界遺産候補になり得たのは、地元の方々をはじめ、多くの関係者が環境保全に努めながら、富士山と共存してきたからだと思います。

 今後は人類共通の財産である世界遺産として後世に引き継いでいくために、どのような形で富士山を保護・保全していくことが望ましいのか、地元の方々や行政がともに考えていくことが必要になります。こうした取り組みを通じて、富士山の保全のみならず、まちづくりや地域おこしへの気運が高まっていくことを期待しております。

富士北麓分室

本年度新設された世界遺産推進課。県立富士ビジターセンター内には富士北麓分室も開設した

学術委員会による現地調査

学術委員会による現地調査。富士山の普遍的価値について調査研究を行う=富士山5合目

 世界遺産登録により、自然環境の保全や観光振興、地域の活性化などといった多くの恩恵が期待されますが、富士山のそばに暮らしていることへの誇りや、郷土を愛する気持ちがはぐくまれ、次代へと継承されていくことが、最大の恵みではないかと考えます。

 多くの皆様に、富士山の世界文化遺産登録へのご理解とご協力をいただく中で、登録が早期に実現するよう取り組んでいきたいと考えております。

(2007年7月1日付 山梨日日新聞掲載)
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