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富士山を世界文化遺産に

山梨県知事 横内 正明

 富士山は、その荘厳で秀麗な姿と圧倒的な存在感から、古代より、日本人に畏敬の念と感銘を与え続け、信仰の対象や文化・芸術の源泉ともなってきました。

 万葉集では「日の本の 大和国の 鎮めとも います神かも 宝ともなれる山かも」と詠われ、古代から国の鎮めの神や、「国の宝」として讃えられてきました。

 この日本人の心の拠り所である富士山とその周辺の文化財を「世界の宝」として、未来に引き継いでいく世界文化遺産に登録するため、県では静岡県や地元市町村と共同で、様々な関係者の御協力も得ながら、鋭意取り組みを進めています。

 1972年11月に開催されたユネスコ(国際連合教育科学文化機関)総会で「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)が採択されてから37年が経ちました。

 この間に世界遺産の登録件数は増加し、現在では全世界で900件に迫る数となっており、登録審査のハードルは年々高くなってきています。そのため、富士山の持つ世界遺産としての価値が、国内のみならず、国際的にも十分理解されるよう説明していくことが一層求められています。

富士山世界文化遺産国際専門家会議

真剣な議論が行われた富士山世界文化遺産国際専門家会議(山中湖村)

 こうしたことから、国際的な視点でアドバイスをいただき、登録に万全を期すため、昨年9月、富士北麓地域で「富士山世界文化遺産国際専門家会議・国際フォーラム」を開催しました。フォーラムでは、ユネスコの諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)の専門家から富士山の顕著な普遍的価値や適用する評価基準、保存管理計画の内容等について、多くの貴重な御意見をいただきました。

 その中で、富士山の持つ信仰や芸術的価値とともに、自然美についても高い評価をいただく一方、構成資産の範囲拡大の検討などについて指摘があり、現在、これらの諸課題への対応を進めながら、登録実現に向けて全力で取り組んでいます。

 世界遺産登録はゴールではなく、保護・保全のスタートあるいは過程であると言われています。

 登録をきっかけに、そこに住む人々が富士山の自然や歴史、文化に誇りを抱き、「人類共通の財産として子供や孫に継承していこう」「地域を更に良くしていこう」という気持ちを一層強めるとともに、保護・保全活動を通して、活力ある地域づくりなどが広まっていくことにつなげていきたいと考えています。

 世界遺産登録が、富士山の保護・保全に対する意識の一層の高揚と、山梨県の更なる発展の契機となるよう、皆様の御理解と御協力を頂きながら、早期登録に向けて、精一杯取り組んでいきたいと思っています。

(2010年7月1日付 山梨日日新聞掲載)
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