富士山に酸素吸入器散乱
登山者、ポイ捨て 環境庁が持ち帰り呼び掛け
富士山の登山道沿いに、高山病対策の携帯用の酸素吸入器が投げ捨てられ、新たなごみ公害となっている。南アルプスなどの険しい山にはみられず、老若男女が登る富士山ならではの現象。環境庁などは「回収や処理に苦労するうえ、日本のシンボルのあちこちに散乱していては、みっともない」として、使用者に持ち帰るよう呼び掛けている。
吸入器は、プラスチック製の円筒(直径約8センチ、長さ約20センチ)にマスクが付き、スプレー方式で酸素を送り込む。高山病で息苦しくなったり、頭が痛いときに使う。1本で90秒間使えるものが一般的で、値段は1000~1500円。スポーツ店で扱っているほか、最近は富士山吉田口登山道の大半の山小屋や売店で販売している。
昨年から使用済みの容器が登山道で目に付くようになった。環境庁富士箱根伊豆国立公園船津管理官事務所によると、8合目以上に多く転がっていて、「昨シーズンの登山最盛期には、清掃の度に一日に約10本回収した」という。登山道から離れた所に投げ捨てられ、拾うに拾えないこともある。
山開き前に開かれた夏山受け入れ対策会議でも取り上げられ、「うかつに処理して爆発でもしたら大変」という声も出た。県警外勤課が落石事故後の14日に登下山道の点検をした時にも、8合目周辺に散乱していた。
2年前から販売している7合目の山小屋は「小屋で売るより、登山者が準備して来る方が多いようだ」という。5合目の売店は「シーズン中の土、日曜日には一日で2、30本売るときもある」と話している。
今シーズンの富士山には約20万人が6合目以上に登るとみられている。船津管理官事務所は「ごみ持ち帰り運動を徹底させるほか、販売する山小屋に対しても協力を呼び掛けていく」(野口明史主査)としている。【当時の紙面から】
(1988年7月17日付 山梨日日新聞掲載)