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2022.11.20 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 11月 /

富士山、国の史跡に

文化審議会が答申「日本を代表する信仰の山」 世界遺産登録へ手続き進む

 文化審議会は19日、日本を代表する山岳信仰の対象として、「富士山」を新たに史跡に指定するよう、高木義明文部科学相に答申した。古代から近現代に至る山岳信仰の在り方を考える上で重要とし、山頂や寺社、登山道を国の史跡に指定する。寺社などの文化財指定は富士山の世界文化遺産登録の条件とされており、登録に向けた作業は大きく前進する。

 山梨、静岡両県の申請を受け、審議会が検討。万葉集に日本の鎮めの神と歌われるなど古くから信仰の対象とされてきたことから、史跡に指定するよう求めた。

 史跡への指定が答申されたのは、8合目以上の山頂部と鳥居など山頂信仰遺跡のほか、山梨側は北口本宮冨士浅間神社(富士吉田市・御鞍石、大塚丘を含む)、河口浅間神社(富士河口湖町・御坂峠を含む)、冨士御室浅間神社(富士河口湖町・本宮と里宮)、吉田口登山道。静岡県側は富士山本宮浅間大社など6寺社が含まれている。

 近く答申通り指定される予定。美しさや雄大さだけでなく、わが国を代表する「信仰の山」としての歴史的価値にお墨付きを与える意味があり、山梨県世界遺産推進課は「中核的な構成資産である富士山が史跡に指定されたことは世界文化遺産登録に向け大きな前進」と歓迎。文化庁も「登録を実現するための重要な通過点」としている。

 5合目以上の山頂部や吉田口登山道などは1952年、特別名勝に指定されている。県は史跡指定に伴う、新たな保存管理計画の策定作業を進めているが「規制の強化にはつながらない」としている。

 今回の答申で、世界文化遺産を構成する資産のうち13件の文化財登録が完了する見通し。残るは河口湖、山中湖、西湖、精進湖、本栖湖、御師住宅。このうち御師住宅は「地元の作業は終わり、国への申請に向けた調整段階」(同課)という。

 一方、「最後のハードル」となる富士五湖の文化財指定に向けては、県と地元市町村が権利者の同意取得作業を進めている。ただ、湖畔のボート業者らの間には規制強化への懸念が強く、全権利者(計355件)から同意を得られるかは見通せない状況だ。 【当時の紙面から】

(2010年11月20日付 山梨日日新聞掲載)
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