富士北麓から歌壇見据える
山梨県の富士北麓地域を拠点とする富士短歌会発行の歌誌「富士」。歌誌「国民文学」の選者・編集委員を務めていた川崎勝信さんが、2007年1月に創刊。毎月投稿を募り、当初は隔月で発行。現在は季刊(年4回)発行。選は川崎さんが担当し、短歌作品や歌論、エッセーなど同地域を中心に県内外から集う会員の発表の場になっている。
拠点は富士山のふもと富士吉田市。歌誌には富士山を詠んだ作品も目立つ。これまで発行した「富士」では、作歌にとどまらず、会員らの歌集評や古典・近現代短歌論、随想、作家や芸術家といった幅広いジャンルからの特別寄稿も掲載。また創刊時以来、「国民文学」の代表を務めた千代国一の研究を一つのテーマとして掲げ、歌集評や歌論、再読なども展開。
2021年4月には創刊100号を迎えた。100号記念特集は、会員16人が新作を20首ずつ発表。このほか、節目への思いをつづったり、川崎さんの歌集「天人」から一首ずつ挙げて読み解いたりした。また、中学生以下の子どもの作品も募集し「あすなろ集」として収載している。100号記念の別冊として合同歌集も発刊。2019年12月号から2020年10月号までに発表された作品や総合誌掲載の歌の中から、67人の自選12首と感想文を載せている。
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2022年には創刊15周年記念号を刊行。会員らの短歌や随想、日本文学研究者による記念評論などを掲載。記念号に合わせて会員から募集した作品と随想を収載。会員全員が2021年の「富士」掲載作品から自選した10首を紹介。記念評論は日本文学の研究者がそれぞれの専門分野を解説。都留文科大教授の鈴木武晴さんの「上代の郡家・郡司の文学的機能」など3編を掲載。
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