土石流の被害深刻、富士山
復旧めど立たず
県と富士吉田市などは9日、富士山で8日に発生した土石流(雪代)による調査を行った。しかし土石流が予想以上に大規模なことと、二次災害の恐れがあるため全容をつかむのは来春以後になる模様。このため復旧工事のめどは立たず来年の観光に大きな影響を与えそうだ。
県企業局によると、県営富士山有料道路三カ所を覆った土砂や雪は、御庭地点で幅約80メートル、土砂量約1万1000立方メートル、石楠花橋地点で幅約50メートル、約500立方メートル、坂下地点で幅約100メートル、約3000立方メートル。雪崩の発生地点はいずれも7合目付近とみられるが長さは不明。現場では大量のシラベ、ダケカンバ、シャクナゲなどの高山植物がなぎ倒されていた。
この日は午前9時から調査員約10人が現地に向かい、御庭地点と石楠花橋地点で調査に必要な車両の通行路確保のため、ブルドーザー2台で約8メートルほどの通路をつくった。坂下地点については「土砂を掘ると再度流れ出す。二次災害の危険性が高く、年内は手の出しようがない」と言う。
現地を調査した職員は「春先になると、大量の雪解け水が流れ出す。現在と同じ状況が各所で起こる可能性が高い」と指摘。県企業局は「今後、被害状況、土石流の規模などを本格的に調査しなければならない。復旧工事はその作業がある程度進展し、雪崩の危険性が低くなる春を過ぎてから」と話している。
一方、6合目の安全指導センター周辺の調査は午後3時から始まった。市の職員、富士吉田署員ら約10人が参加。センターと山小屋を襲った土石流は、現場より約1キロ上の7合目・花小屋付近から始まっていることを確認した。幅は最大100メートルだった。
センターの復旧は「新たに建て直すにしても、これまで建てられていた場所の地形の調査、危険度の見極めなどをしないと何とも言えない。復旧は来年春以降の状況次第」と言う。
道路の復旧が年内絶望となったため、観光客など一般車両は5合目ロータリーまで行けなくなった。県企業局によると「正月の三が日は天候にもよるが毎年約5000台前後の車両が通行する。今年は通行できても4合目付近まで」と話し、ご来光目的の登山客や観光客の足にも影響が出そうだ。 【当時の紙面から】
(1992年12月10日付 山梨日日新聞掲載)