加倉井和夫と富士
国内を代表する日本画家の加倉井和夫(1919-1995)は、神奈川県横浜市生まれ。1944年に東京美術学校(現・東京芸大)日本画科卒。山口逢春に師事した。1947年に日展に初入選。1958年と1961年に特選、1963年に菊華賞、1969年に桂花賞を受賞した。1990年、日展常務理事。
1981年に「青苑」(1980年日展出品)が第37回日本芸術院賞、1989年日本芸術院会員に選ばれた。1981年には第5回野口賞を受賞。1990年には山梨県山中湖村初の名誉村民の称号を贈られている。
山中湖村に居を構えたのが1975年。以来、富士山北麓の自然の中で画作に専念。作品群は「白の世界」などと形容された。画面の余白的な白は高い品格とともに、新鮮な詩情や清浄さを醸し出した。
「第二の故郷」ともいえる富士山麓で制作された作品は数多い。「青苑」は、クジャクが羽を広げた秀麗な姿を富士山の裾野のイメージに重ね合わせた代表作の一つ。山梨県立美術館に収蔵されている「春朧」は左右から中央に向かって枝を張る木々の間に、透明感あふれた光が描かれた。「空間こそ永遠」と語っていた独特の空間把握の本領が発揮された作品。
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