令和の富士、今と未来語る [4]
【入山規制】長崎知事・「混雑避ける」へ誘導 川勝知事・「弾丸」自粛促し成果
-2019年7月、ユネスコの世界遺産委員会で2回目の提出となった富士山保全状況報告書が承認されました。どのような点が評価されたと受け止めていますか。
長崎知事 「世界遺産登録時の課題は、全ての分野で順調な進展が見られる」と評価されている。これは両県関係者の営々とした努力の積み重ねがあったからだと思う。取り組みの方向性は正しいということなので、今後さらに努力していきたい。
川勝知事 山梨県とともに登山道整備や登山者管理などを取りまとめた1回目の報告書の評価は高く、他の世界遺産のモデルにしたいということで再提出となったのが2回目だった。報告書の作成には大変な労力が必要だったが、今回の評価も完璧だと聞かされている。世界遺産委員会からは今年12月までに3回目の提出を要請され「またか」とは思ったが、確認したところ「最後の事務的なもの」とのことだったので安心している。
-保全状況報告書では登山者数について、吉田口登山道で1日4千人、富士宮口で1日2千人を超えた場合を「著しい混雑が発生する水準」と定義。水準を超える日数を19年に吉田口は3日以下、富士宮口は2日以下とする目標を設定しましたが、昨夏は達成できませんでした。現状への認識や入山規制への考えを聞かせてください。
長崎知事 昨年は山梨県側で登山者数4千人を超えた日が6日間あった。山頂付近で起きた崩落で7月に登頂が一時規制され、梅雨明けが遅れたこともあり、登山者が8月に集中する要因があった。ただ、4千人(の目標設定)ですら多いかもしれない。引き続き、(抑制に向けた)さまざまな努力が必要だ。当面の対策としては、週末の夜間の混雑に関する情報提供。中長期的には、年間を通じた平準化もしっかり考えねばならない。5合目も含めて混雑状況を早いうちに伝え、こんなに混んでいるならやめようかと登山者の判断を誘導することが重要だ。入山規制は最終手段。まずは登山者の自主的な判断を導いていくことが理想的だ。
川勝知事 安全で快適な登山という視点で取り組んでいる。例えば(富士山頂で日の出を見るため夜通し歩いて山頂を目指す)弾丸登山は自粛を呼び掛ける活動が功を奏し、少なくなってきている。登山者が多く訪れるのは週末やお盆の時期で、御来光の時間は8合目以上が渋滞することが分かっている。登山者にこうした情報を提供しているが、昨夏は両県で1日最大8千人が登山し、残念ながら目標を達成させるまでに至っていない。富士山は万人に開かれた山であり、入山規制は厳しい。登山者を平準化できない場合、登山者の気持ちが平日に向くように、富士山保全協力金の金額に(混雑期と平日で)差を付けるといった考えも出てくるのではないか。