世界文化遺産登録めざし活動活発化
日本人の心の風景
富士山の国連教育科学文化機関(ユネスコ)による世界遺産(文化遺産)登録に向けた活動が山梨、静岡両県を軸に活発化している。両県と地元市町村でつくる登録推進両県合同会議は、2007年を目標に世界遺産の暫定リスト入りを目指しており、資産価値や登録範囲の設定など学術的な検討を進めている。さらに「NPO富士山を世界遺産にする国民会議」も発足し、登録実現に向けた機運を全国規模で盛り上げようと活動を本格化させている。
山梨静岡の連携強化/NPO機運醸成に一役
山梨県側は、一昨年9月に県教委が特別名勝・富士山の保存管理計画の見直しに着手、昨年10月に環境保全や文化財保護などの施策を進める県推進本部を設置した。さらに関係市町村と推進協議会を立ち上げ、地元が一丸となった推進体制を整えた。山梨、静岡両県は昨年12月に合同会議を設置、連携して登録実現を目指している。
当面は、国が世界遺産登録に推薦する物件をまとめる「暫定リスト」への登載が目標。現在、両県の学識者らで学術委員会が組織され(1)世界遺産に推薦するための国際的な価値証明(2)文化遺産としての芸術的、歴史的、社会的、科学的側面(3)資産の範囲の考え方-などについて検討を進めている。
一方、世界遺産登録に向けた支援組織として昨年4月に政治、経済、文化などの各界代表者で富士山を世界遺産にする国民会議(会長・中曽根康弘元首相)が発足。これまでにシンポジウムや全国富士山ネットワーク会議などを開き、機運の醸成を図っている。今年4月には山梨、静岡両県関係の国会議員による会も組織された。
富士山の世界遺産登録をめぐっては山梨、静岡両県の住民や自然保護団体が中心となって1994年に「富士山を世界遺産とする連絡協議会」が設立され、自然遺産での登録を目指して署名活動や、国会への請願などを行ったが環境保全対策に問題があるなどとして、政府の推薦は見送られた。2003年、国の検討会が自然遺産の国内候補地に富士山を挙げ、山梨、静岡両県はあらためて国への働き掛けを強めたが、最終的に候補地には選ばれなかった。
世界文化遺産登録を目指した最近の活動は、ユネスコの世界遺産委員会で基準が見直され、「文化的景観」という新たな概念が加えられたことなどが契機になっている。
○ズーム
世界文化遺産 建造物や遺跡などを国際的に保護するため、1972年にユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づき、世界遺産委員会が登録する。「記念工作物」「建造物群」「遺跡」に分けられ、芸術や信仰など精神活動の母体となる「文化的景観」も対象。登録には(1)顕著で普遍的な文化的価値がある(2)登録申請区域に文化的価値の大部分を含む(3)適切な保護管理の仕組みがある-などの条件を満たす必要がある。
(2006年7月1日付 山梨日日新聞掲載)