2022.1.14
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山日紙面で見る富士山 /
1月 /
一字一石経が大量に出土
吉田口登山道の「鈴原社」周辺 富士山信仰と関係?
富士吉田市教委が復元整備を計画している富士山吉田口登山道1合目の「鈴原社」周辺で、小石に法華経を書いて埋納した「一字一石経」が3、4千個見つかった。一字一石経の埋納は、江戸時代を中心に県内ほぼ全域で行われていたとされ、各地で経塚が見つかっている。しかし富士山で見つかったのは初めてで、山岳信仰である富士山信仰と、法華経とのかかわりなどが関係者らの関心を集めている。
市教委などによると、一字一石経は明治時代に築かれた遺構の、さらに約20センチ下から見つかった。3-7センチの平たい石の両面に、法華経が1文字、または2文字書かれている。発掘したのは部分的だが、「かなり広範囲に埋納されているようだ」(同市教委文化振興課)という。
県埋蔵文化財センターの話では、一字一石経は、当時の人々が「五穀豊じょう」「病魔退散」などを祈願して村や寺などの一角に埋納した。法華経全文では、石の数は7万個近くになるという。「祈願の目的などを記した石などが見つかれば、埋納当時の状況が分かる」という。
現地から発掘された石は同市教委が保管している。近く整理作業に取り掛かり、詳しい調査を行うことにしている。同文化財センターの田代孝調査研究課長は「登山道沿いにどのような経緯で一字一石経が埋納されたのか、大変興味深い」と話している。
市教委は本年度から5カ年計画で、6合目までの旧登山道の史跡整備などを進めている。昨年秋、1合目の「鈴原社」周辺を発掘、測量調査をしたところ、今回の一字一石経が見つかった。埋蔵物の調査結果などを踏まえ、本年度中に登山道の整備基本計画を策定する。 【当時の紙面から】
(1997年1月14日付 山梨日日新聞掲載)広告