カーリング娘、山梨に誕生
スピードスケートで多くの五輪選手を輩出している富士急行(山梨県富士吉田市)が創設したカーリング部。競技の普及とともに冬季五輪出場を目指し、2010年8月9日発足。結成時のチーム名は「チームフジヤマ」、メンバーは園部淳子さん、松田敦子さん、山下知恵理さん、小穴桃里さん。2015年に「富士急」に変更。2022年6月時点のメンバーは小穴桃里さん、小谷優奈さん、小谷有理沙さん、石垣真央さん、苫米地美智子さん。
公式戦デビューは、2010年12月29日に長野・スカップ軽井沢で行なわれた第6回山梨県選手権。対戦相手は「チーム甲府」で、第1試合を8-5、第2試合を6-3で勝利し、優勝した。2014年1月には第6回関東選手権で初優勝、チーム結成4季目で初めて日本選手権の出場権を獲得した。
2015年
2月に行われた日本選手権では、1次リーグで、ソチ冬季五輪代表の北海道銀行に1点差で惜敗したが、5連覇を狙う中部電力に大勝、1次リーグを1位突破したロコ・ソラーレ北見に唯一の土をつけるなど健闘。4チームによるプレーオフ(PO)へ初めて進出した。POでは準決勝で敗れたものの、3位決定戦でヒト・コミュニケーションズに勝利し3位に入った。
2016年
1月に行われた関東選手権では3連覇を果たし、2月に青森で行われた日本選手権では、1次リーグ4位で2年連続PO進出。初戦でチーム軽井沢を、準決勝で北海道銀行を破り初の決勝進出。決勝ではLS北見に敗れたが過去最高の準優勝を果たした。10月にはカナダに遠征し、ワールドツアー3大会に参戦。第1戦でLS北見に6-5で競り勝つなど、3大会中1大会で決勝トーナメントに進み、通算7勝7敗の成績を残した。12月の軽井沢国際選手権は1次リーグ2勝2敗。
2017年
1月にスイスで行われたワールドツアー大会の予選リーグでは、欧米の強豪と対戦し4勝3敗と勝ち越し。同月末から行われた日本選手権は、1次リーグ5勝3敗で4位となり3年連続PO進出。PO初戦で北海道銀行に敗れたが、3位決定戦で再び北海道銀行と対戦、7-5で勝利し3位となった。12月の軽井沢国際選手権は1次リーグ敗退。
2018年
1月の関東選手権では2年ぶり4度目の優勝を果たし、日本選手権に出場。日本選手権では、1次リーグ6勝2敗で3位となりPOへ進出。POでは1回戦で青森Jr.、準決勝で2連覇を目指した中部電力に勝利し、2大会ぶりに決勝進出。決勝では3大会ぶりの優勝を狙った北海道銀行を5-3で破り初優勝、世界選手権初出場を決める。3月にカナダで開かれた世界選手権では、予選リーグ通算5勝7敗の10位で、PO進出はならなかった。5月にはパシフィック・アジア選手権(PACC)の国内代表決定戦で、平昌冬季五輪のカーリング女子・銅メダルのLS北見と対戦、3連敗で代表を逃した。12月の軽井沢国際選手権では、1次リーグを2勝2敗で突破するも、決勝トーナメント初戦で敗れた。
2019年
1月には、スウェーデンで開かれたワールドカップ(W杯)に出場、1次リーグ2勝4敗で敗退。2月には札幌市で開かれた日本選手権に出場。1次リーグ6勝2敗で5大会連続のプレーオフ進出を決めたが、1回戦で北海道銀行に敗れ、連覇を逃した。ワールドツアーは、8月に行われた「どうぎんカーリングクラシック」、「ADVICS CUP」はいずれも予選リーグ敗退。11月の海外ツアー(カナダ開催)で2度優勝。12月の軽井沢国際選手権では、1次リーグを4勝1敗で決勝トーナメント進出。1回戦でSC軽井沢クラブJr. に勝利するも、準決勝でロコ・ソラーレに、3位決定戦で米国チームに敗れた。
2020年
1月の関東選手権では5度目の優勝。2月の日本選手権では、1次リーグを4位(4勝4敗)でPO進出を果たすも、決勝トーナメント初戦で北海道銀行に敗れ、2年ぶりの優勝ならず。
2021年
1月に長野県で開催予定だった関東選手権は中止となり、富士急は関東の前年度優勝チームとして、北京五輪代表選考を兼ねた日本選手権(2月・北海道)に出場。予選リーグ3勝3敗の4位で決勝トーナメント進出するも1回戦で中部電力に敗れ、北京五輪出場の道が断たれた。
日本ミックスダブルス選手権(2月・青森)には、小穴桃里選手が出場。銅メダルに輝くも、北京五輪出場には届かなかった。
どうぎんクラシック(8月・北海道)では、予選リーグで北海道銀行らを、決勝トーナメントでは中部電力、ロコ・ソラーレを破って優勝した。
世界カーリング選手権の日本代表選考会(12月・北海道)には、富士急に加え、11月末に解散した「北海道銀行フォルティウス」の主力選手がメンバーのTeamYoshimura、中部電力の3チームが出場。富士急は、2回戦総当たりの予選リーグで、通算4敗の3位となり、上位2チームが出場する代表決定戦に進むことができなかった。
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2022年
1月の関東選手権では6度目の優勝。第39回日本選手権(5月・北海道)に関東ブロック代表として出場。大会は、北京五輪銀メダルのロコ・ソラーレなど9チームが出場。富士急は1次リーグ(9チーム総当たり)2勝6敗の8位で、上位4チームが進む決勝トーナメント進出ならず。
チームを運営する富士急ハイランドが9月2日に富士急カーリング部の休部を発表。所属選手3人(小穴桃里さん、小谷優奈さん、小谷有理沙さん)の退部・退社が決まり、同社は「チーム体制を再構築する必要がある」と判断。活動を休止し、新たな選手の獲得や競技環境の整備を進めていくことを決めた。同社の担当者は「チームの状況を踏まえて、休部を決めた。現時点で廃部とすることは考えていない」と話している。休部は2日から。期間は「競技ができる段階になるまで」とし、「休部期間も山梨県カーリング協会の会員として、競技普及のための活動に取り組んでいく」という。
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なお、活動拠点の「カールプレックスフジ」のある山中湖村は1937年、日本で初めて開催されたカーリングの大会「第1回カーリング全日本選手権」の開催地でもあり、古くからカーリングとの結び付きがある。