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イコモス現地調査あすスタート

観光開発、評価ポイントに

 富士山の世界文化遺産登録をめぐり、29日から始まる国際記念物遺跡会議(イコモス)の現地調査では、開発行為に対する評価がポイントの一つになりそうだ。富士山はエリアが広く市街地も含まれる上、5合目などでは観光地としての開発も進んでいる。山梨県などは法令で大規模開発が制限され、将来にわたって環境が守られることを説明し、理解を求める考えだ。

山梨 「法令で制限」説明

 世界文化遺産に登録するかは、推薦書と、イコモスが現地調査を経て出す勧告内容を基に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会が判断する。ただ、近年はイコモスの勧告内容が尊重される傾向にある。

 イコモスの現地調査で重視されるのが、世界遺産候補の開発状況。今年、ロシアで開かれた世界遺産委員会では、世界遺産の要素となる構成資産周辺で、商店街や工場開発などの計画が浮上していたことを問題視し、イコモスが「登録延期」を勧告した海外の遺産候補もあった。

 富士山についても、富士五湖周辺や富士山5合目は開発されていて、土産物店やホテル、旅館などが立ち並ぶ。こうした観光施設も構成資産のエリアに含まれる。

 県幹部の1人は「5合目の土産物店は多くの人が富士山を訪れて誕生した。日本人にとって富士山の存在が大きいことを示している」と強調。富士山の価値を損なうものではない、との説明をする考えだ。今後の保全策も「さまざまな法律の範囲内での開発であり、大規模開発は制限されている点を丁寧に説明すれば問題ないはず」としている。

 構成資産以外では、富士山麓にある陸上自衛隊北富士演習場が登録上、どう判断されるのかも課題の一つとなる。

 山梨県などは北富士演習場一帯を自主的に保全管理区域に設定し、開発行為に制限を加えている。「周辺に軍事施設がある外国の世界文化遺産もある。北富士演習場は開発行為が行われず、保全上問題はない」(世界遺産推進課)として理解を求める、という。

(2012年8月28日付 山梨日日新聞掲載)
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