【特集】Mt.富士トライアスロン富士河口湖2022
4日、富士河口湖町の河口湖と西湖を舞台に行われた「Mt,富士トライアスロン富士河口湖2022」。男子は梅田祐輝(東京)が2時間2分20秒で初代王者の座に輝いた。女子は川崎由理奈(埼玉)が2時間19分44秒で初代女王に。リレーは「W.V.T.C.筋肉美男子」(スイム棚網宏之、バイク石倉龍二、ラン田村好弘)が2時間17分28秒で制した。山梨県勢の最高成績は栗原正明(北杜市)の2時間7分4秒で、男子4位だった。梅田はバイクで3位からトップに浮上、得意のランでそのまま振り切った。川崎はスイムでトップに立ち、バイク、ランもそのまま逃げ切った。筋肉美男子は3種目全てでトップ通過し、完全優勝した。オープン参加した大会アンバサダーの玉﨑稜也(小泉)は2時間1分31秒で圧巻のフィニッシュだった。
〈男子〉梅田(東京)初代王者「最高の環境」満喫
両手を握りしめ、梅田祐輝はフィニッシュした。男子の初代王者に輝いた37歳のアスリートは「最高のロケーションのレースに勝つことができてうれしい」と、真っ黒に日焼けした顔をほころばせた。
高校までは競泳に取り組んだ。インターハイに自由形で出場した経歴の持ち主で、スイムで3位と好位置につけるとバイクでトップに立った。2位と21秒差で「最も得意」というランへ。「スタート(した時間)のタイム差を考えると十分優勝できると思った」と2分近いタイム差をつけて逃げ切った。「スイム、バイク、ラン、すべてがうまくいった結果」と振り返った。
大学入学後に「何か新しいことに挑戦したい」と思い、トライアスロンを始めた。2013~20年は日本トライアスロン連合の強化選手として活躍。16~17年はワールドカップに出場し、20年には日本選手権で9位となった実績がある。
トライアスロンショップのチームに所属。今年から「競技をもっと普及させたい」との思いから、プロやセミプロが参加するエリートカテゴリーに一区切りをつけ、プロアスリートから一般までを対象にしたコーチングに本腰を入れている。「過酷なイメージが先行してしまうが、トライアスロンの楽しさを伝えていきたい」と意欲を語った。
富士山の麓の自然に囲まれた景色を存分に楽しんだ。「これまで、100レース以上に出場しているが、トップレベルの素晴らしい景観と環境だった。これからも続く大会になってほしい」と、雲の切れ目から望む富士山を見つめた。
〈男子〉栗原(北杜)県勢最高4位「声援が力に」
「エース栗原!」。会場アナウンスの声が響き、観客の拍手と声援がひときわ大きくなる中、北杜市の35歳、栗原正明は両手を大きく広げながらフィニッシュした。2時間7分4秒で男子4位。「地元山梨でのレースは最高。沿道の声援が背中を押してくれた」。「地域密着型プロアスリート」として、競技の普及にも取り組んでいるエースの表情には、万感の思いがにじんでいた。
スイムは他の選手に巻き込まれないようマイペースで進んでバイクへ。2日前の試走で思い描いた展開の通り、序盤に1キロほど続く上りを冷静に走り抜けた。西湖から河口湖へ戻る帰りはヘアピンカーブのある下り坂。「しっかり安全確認をしながら」ランに向けての余力を残した。気温が上がり、日差しを受ける中でのランは「今の自分の出せる力で攻める」とフルパワーを注入。全体で2位となる35分2秒の猛チャージで4位にまで順位を押し上げた。
全国大会で実績のある選手が大会を彩った一方で、出場者の3分の1が今大会で初めてトライアスロンに挑戦した。前日に開かれた初心者向け教室で講師を務めた栗原の願いは「たくさんの人に競技の楽しさを知ってほしい」こと。だから、苦しい状況でも常に笑顔で声援に応えた。
「河口湖大橋を(車両)通行止めにするなんて、とてつもないこと。関係各所に感謝したい。10年、20年と続いて、トライアスロンを始めるならここから、というように価値ある大会になってほしい」と願いを込めた。
〈男子〉片山(甲斐)初参加で完走 大会最年少の19歳
大会最年少の19歳で出場した甲斐市の片山義翔は、トライアスロン初体験ながら見事完走を果たし、「10代で出場でき、いい思い出になった。達成感があります」とさわやかに笑った。
高校時代は自転車の強豪・甲府工で主将を務め、インターハイにも出場したスポーツマン。双葉中時代には陸上で中長距離の経験もあり、「地元の大会なのでぜひ出たい」とエントリーを決めた。
最初のスイム。ウエットスーツを着用して湖で泳ぐのは初めてで、思いのほか体力を奪われた。しかし、得意のバイクで巻き返し、最後のランは自分なりのペースを守って、トータル2時間57分30秒でフィニッシュ。「沿道からの声援が励みになり、力が入った」と感謝した。
もともと興味があったというトライアスロン。「つらさも楽しさも味わえていい経験になった。今後も近場の大会があればエントリーしてみたい」と話していた。
〈男子総合順位〉
居住地 総合 スイム バイク ラン
(1)梅田 祐輝(東 京)2: 2:20(20:59、1:6:37、34:44)
(2)大倉 拓也(大 阪)2: 4:25(22: 3、1:7: 7、35:15)
(3)原田 洋旭(大 阪)2: 6:19(20:20、1:7:37、38:22)
(4)栗原 正明(山 梨)2: 7: 4(23:47、1:8:15、35: 2)
(5)駒野 悠太(神奈川)2: 7:22(22:38、1:7:20、37:24)
(6)高橋 豪一(東 京)2: 8:44(22:42、1:7:14、38:48)
(7)山本 淳一(千 葉)2: 8:57(21:10、1:7:17、40:30)
(8)杉山 太一(静 岡)2:10:10(23:27、1:9:40、37: 3)
(9)権田 明寛(神奈川)2:11:10(25: 0、1:8:42、37:28)
(10)高嶺 寛己(東 京)2:12: 0(23:37、1:6:31、41:52)
〈女子〉川崎(埼玉)女子V 全力で楽しむ36歳笑顔
日本一の霊峰を背に、川崎由理奈は女子トップのゴールテープを切った。「(距離が)長くてつらいし、段階的なスタートで順位も分からない。でも、楽しかった」。自然と笑みがこぼれた。
明大入学時にトライアスロンを始め、3年次にはインカレ準優勝。大学院卒業後も公務員として働く傍ら練習に取り組み、プロやセミプロが出場し、五輪選考に絡むこともある「エリート」の大会に出場してきた。
36歳。最前線で競う選手の中ではベテランに数えられる。昨年の東京五輪を目標にしていたが代表入りはならず、「一つの目標が終わった」と、エリートの大会への出場をやめた。競技から離れることも考えたが「好きで続けてきたトライアスロン。今度はとにかく楽しもう」と競技への接し方を変えた。
練習仲間から今大会の開催を知らされたのは5月。「出るからには全力を出し切る」と、楽しむことを優先に、勝負へのこだわりも捨てなかった。
得意のスイムをトップで通過。43キロのバイク、9.5キロのランでもスピードは衰えず、後続に4分以上の差を付けて初代女王の座をつかんだ。「思い描いていたプラン通り」と満足そうに振り返った。
泳いで、こいで、走って、楽しんだ2時間19分44秒。「達成感があり、新たな目標もできる。得るものが大きい。来年以降もこの大会が開催されるなら、また優勝を目指したい」。トライアスロンへのあふれる愛情が言葉に込められていた。
〈女子総合順位〉
居住地 総合 スイム バイク ラン
(1)川崎由理奈 (埼 玉)2:19:44(21:46、1:16:48、41:10)
(2)加来奈津子 (東 京)2:24: 2(24: 4、1:18:23、41:35)
(3)グリアーとも(東 京)2:31:58(25:32、1:19:19、47: 7)
(4)須崎 とも (東 京)2:32:29(31:28、1:16:25、44:36)
(5)平井 澪希 (京 都)2:34:22(25:27、1:19:13、49:42)
(6)折原由里子 (東 京)2:35:10(24:25、1:23:22、47:23)
(7)小栗 梓 (愛 知)2:35:39(24:13、1:22:47、48:39)
(8)加藤 知子 (東 京)2:36:39(26: 6、1:22: 5、48:28)
(9)粂原 法子 (東 京)2:37: 1(33: 0、1:16: 4、47:57)
(10)秋山 恵美 (神奈川)2:39:52(24:52、1:28: 9、46:51)
〈リレー〉W.V.T.C.筋肉美男子 「一芸」で制覇
「3人でつかんだ優勝。楽しく競技できた」。リレーで優勝した「W.V.T.C筋肉美男子」のメンバーは口をそろえた。スイム、バイク、ランで一度も首位を譲らない“完全優勝”。「それぞれの長所を発揮できた」とうなずき合った。
東京都杉並区のスポーツクラブで出会った38歳の棚網宏之、53歳の田村好弘、34歳の石倉龍二でチームを結成。棚網と田村はトライアスロンの経験が豊富だったが、石倉は過去に1度しか大会の経験がなかった。石倉は「大学まで競技に打ち込んだバイクならチームに貢献できる」と提案。高校まで水泳部だった棚網がスイムを担い、田村がランを引き受けた。
最初のスイムで、棚網がロケットスタート。首位でバイクの石倉につなぐと、石倉が後続を突き放し、ランの田村が他チームの追撃を振り切った。
棚網は「調子も良く、チームに流れをもたらすことができた」と語り、田村も「後続との差が縮まり苦しかったが順位を守れてほっとした」と安心した表情。石倉は「一芸に秀でた選手が集まることで結果を残せた」と振り返った。来年に向け「連覇に挑戦したい」と、3人は心を一つにしていた。
〈リレー総合順位〉
(1)W.V.T.C.筋肉美男子 2:17:28
(棚網宏之・スイム23:6、石倉龍二・バイク1:12:0、田村好弘・ラン42:22)
(2)個人でのエントリー忘れちゃった 2:22:55
(工藤瑞生・スイム32:7、小島翔斗・バイク1:15:16、市村友玖・ラン35:32)
(3)チーム・コバリン ネオ 2:23:36
(内藤保雄・スイム26:27、堀隆博・バイク1:9:35、堀隆博・ラン47:34)
(4)さんぜろPT 2:27:16
(山尾愛士・スイム23:54、守屋友貴・バイク1:20:14、牧岡哲平・ラン43:8)
(5)関西大学OB(仮) 2:28:10
(廣瀬良・スイム27:21、滝尻真央・バイク1:19:30、坂本凱哉・ラン41:19)
(6)Bongole 2:31:49
(林督人・スイム35:32、松浦大輔・バイク1:11:35、門馬史典・ラン44:42)
(7)梨医水トライアスロン班 2:42:30
(中島秀・スイム28:58、古賀輝・バイク1:19:33、李祐振・ラン53:59)
(8)W.V.T.C.阿佐谷三姉妹 2:42:45
(棚網恵理・スイム33:27、山口優子・バイク1:16:54、清水なおみ・ラン52:24)
(9)KOIZUMI 2:47:23
(名久井佑希・スイム37:51、古澤尊生・バイク1:22:59、中野晃久・ラン46:33)
(10)EARTH TRIATHLON 2:48:37
(花澤彩・スイム36:47、前川広大・バイク1:26:0、前川広大・ラン45:50)
太鼓の音色で選手鼓舞
富士河口湖・勝山中OBらでつくる和太鼓グループ「和太鼓 白檀」が、演奏で懸命にゴールへ向かう選手たちを後押しした。
スタートと、スイムからバイク、バイクからランと種目が切り替わる「トランジション」のタイミングで「Danjiri」など4曲を披露。広瀬祐市代表らメンバーが「選手が盛り上がるように」と奏でた、力強い音色が快晴の河口湖畔に響いた。
広瀬代表は「最高の天気の中、地元のイベントで演奏できて良かった。また機会があれば参加したい」と満足げだった。。
ジビエカレー振る舞う
大会のメイン会場となった八木崎公園では、富士河口湖町内で加工されたシカ肉を使ったジビエカレーが振る舞われた。参加した選手には無料で提供された。
カレーを提供したのは、同町精進のレストラン「いろいろ料理ことぶき」。同町本栖で加工されたシカ肉を使用した辛口のキーマカレーが用意され、ブースはゴール後の選手らでにぎわった。